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Orfeon Blog

読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。

FC2読書カレンダーβ版リリース 

FC2の「アプリケーション」用の読書管理ツール読書カレンダー】をリリースしました。

まだまだこれから機能を発展させていく予定ですが、バグや要望などありましたらコメント等でお知らせいただければ幸いです。

「使い方」

1.本を検索する
 -画面の上のタブ「本を検索する」を選ぶと検索画面に移ります。
 -テキストボックスにキーワードを入れて検索ボタンを押す(or リターン)と検索結果が出ます

2.本を登録する
 -検索結果から読んだ本、読みたい本があれば、右側の「日誌に記録する」ボタンを押します
 -ポップアップウィンドウが開くので選んだ本の状態を選択します
  (興味を持った、本を買った、読了、の3つから選ぶ)
 -本にカテゴリラベルを付けたいときはカテゴリのコンボボックスからカテゴリを選択します
  (このコンボボックスで新しくカテゴリを付けたりカテゴリ名を変更することもできる)
 -「本を買った」を選ぶと、状態の下に購入した日時の選択ボックスが下に現れます
 -「読了」を選ぶと、購入日のほかに、読了日、評価、コメント、記事リンクも記入できます
 -読書情報を入力して「登録」ボタンを押すと「読書管理」画面で登録内容が反映されます

3.登録した読書記録を見る
 -画面の上のタブ「読書管理」をクリックすると読書記録画面に移ります
 -画面の左上側のボタンで表示対象の本リストの3つの状態を切り替えます
 -画面の中央で本リストの表示をカレンダー形式、チャート形式で切り替えます
 -カレンダー画面では月ごとの読んだ本が表示されます
   ⇒ マウスカーソルを本の上に合わせると本の情報が表示されます
   ⇒ 本の上でクリックすると、本の登録内容を変更できます
   ⇒ カレンダーの年と月は画面左側のコンボボックスで選択できます
 -チャート形式では年間の本の量がグラフで表示されます
   ⇒ 右側のコンボボックスで表示をカテゴリ形式、積読率形式で切り替えます
 -表示対象「読みたい本」では「興味を持った」で登録した本が見られます
 -「読みたい本」ではリストヘッダをクリックすると、クリックしたヘッダの順に本を並び替えます
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Posted on 2008/10/16 Thu. 21:40 [edit]

category: ソーシャルライブラリー

tag: 読書  管理ツール 
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16

愚か者の哲学 

愚か者の哲学愚か者の哲学
竹田 青嗣

主婦の友社 2004-08-25
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☆☆☆☆☆
難解なイメージで敬遠しがちな哲学ですが、よりよく生きるための知恵としての哲学を、著者の視点からかなりわかり易く説明されていてお勧めです。

要約
人の歩む人生を子供時代、若者時代、大人時代、の3つに大きく分け、人がそれぞれの時代でぶつかる悩みを取り上げ、なぜ人は苦悩するのかについて、これまで歴代の哲学者が考察してきた知恵をわかりやすく噛み砕いて説明しています。

【子供の哲学】
動物は本能のままに生きますが、人が動物と異なる点は、自我によって生きていることです。自我とは、感覚、感受性、美意識など世界を感じる能力であります。特に人の世界を感じる能力は、人が成長していく上で無意識に身についてゆくルールの束とも表現できます。このルールはまず親から与えられます。子供は好奇心からいたずらをしますが、親はこれを叱るのですが、いつか子供は好奇心や快楽よりも、親から褒められるというエロスを覚えるようになります。これによって自我の基本とも言うべき、人との関係性、他者から評価されることの快楽、自己愛に目覚めていきます。 この価値の自己ルールの束は、大きく、真偽、善悪、美醜についてのルールに分けることができます。 この自己ルールが他者や社会のそれとよく一致する場合は自我が安定していて、うまく人と折り合ってゆくことができます。健全な自我の標識は、
① 自分の真善美のルールを自立的にしっかり作り上げている
② 価値の自己ルールを固定的に考えず他者関係の中でそれを調整してゆくことができる
③ 自己ルールを社会的な能力として活かしていくことができる
の3つが挙げられます。特に①の形成は親子関係による影響が大きいため、ここで折り合いがつかない場合は、両親間でのルールが逆である、親のルールが社会のそれと違う、親のルールが自分の都合により与えられている、などの親子関係のねじれを原因として考えることができます。

【若者の哲学】
親の言うとおりの方法で大きくなっていった子供は、言葉のボキャブラリーがある程度増えると、親のルールから自由に思考するようになります。そして人から認められたいという自我が強烈に膨らむ時期である若者は、その自由から自分を正当化することにより、自分という存在のかけがえを実感することに思考のエネルギーを注ぐようになります。しかしこの自己意識の自由は内面だけの自由であり、現実には親や社会のルールに縛られ、挫折することになるのですが、ヘーゲルはこの挫折に反応する3つの類型を示唆していて、
① 誰からも認められなくても自分は自分である
② どんな人の見方や考え方だって相対的なもので絶対なんてありえない
③ 外から宗教や思想などの強力な世界観を自分の物語とする
といった自己意識の持ち方を挙げています。しかし人は社会で生きていく上では他人からの承認がなければ自然な自己価値を見い出すことはできず、結局大人になり、他者からの承認を得るためのゲームに参加することになります。他者からの承認としては、社会的な成功という尺度と、人間として尊敬されるという尺度の2つがあります。人は大人になるにつれ、必ずしも社会的に成功しなくとも人として承認されれば幸せになれることに気づいていきます。この人間として尊敬される人の中身として、最初に出た「真・善・美」の自己ルールが挙げられます。善悪は他者との関係におけるルールの基準として、美醜は人の感性として、真偽は絶対のルールの無い選択肢に対して自分が選んだことを肯定する感覚へのこだわりをそれぞれ表します。このルールを確立できない人は他者や社会の目が過剰に気になり、自分の判断に不安を覚えるようになります。また他者とのルール関係を経ずにできたも自己ルールは独善的なものに陥ります。このように自分というものは他者とのルールの交流を通じて作り上げていくものです。そして他者とのルールによって影響を受けて自己ルールを変容させるときに、人は生の意欲を欲望を充足させることができるのです。
「ほんとう」
人は限りある生の中で「ほんとう」(の人生)を追い求める生き物でもあります。ハイデカーは人は一度きりの人生でなにがほんとうであるかの配慮こそ、人間にとって本性的であり、挫折からニヒリズムに陥るときに人はその本質を捨て去るのだとしています。ヘーゲルは人がほんとうを追う流れを5つのステップで説明していて、まず自分にとって都合の良い自己ルールで自分の中だけで完結するほんとう、一人よがりのほんとうに挫折したときに生の快楽をただ享受することだけを目指すほんとう、男女が互いのロマンを射影しあうロマンのほんとう、正しい人間として生きることを目指すほんとう、そして最後にその人の人間性の表現(極端な例だと文学や芸術作品)を世に問うことから得られる承認、互いの自由を認め合いながらよいものを目指す承認ゲームの中で得られるほんとうを挙げています。人はほんとうというロマンや目標を失うと生きる意欲を失てしまいます。歳を取るにつれて失いがちなほんとうをうまく生き延びさせることが人間と社会にとって大切なことです。
「恋愛」
恋愛はそれだけで生きる意味を満たしてくれるという不思議なものです(そして自分にとってかけがえの無い人を得られる悦びは、その人を失うことの絶望と裏表一体でもあります)。この恋愛が特別なのは、社会的な役割から離れた自分自身を受け容れてもらえると感じられる幻想、そして社会や人の承認ゲームで得られる至高性は得るために大きな努力が必要で現実的に考えることが難しいのに対し、恋愛ではこの至高性(この恋人を得られれば生の意味そのものをつかめるという直感)を誰でも手に届きそうだと感じさせるところにあります。恋愛から得られるエロスには、人が持つ美しさとロマンの結晶化と、他人から無条件に承認されるという関係性からのエロスの2つからなります。つまり自分にとってもっとも美しく価値があると思う存在から無条件に自分が受け入れてもらえるという悦びです。このうち最初の美しいものに対するエロスは、その人が持つ美とロマンを結晶化したものを恋人に射影したものですが、しばしばそのロマンは現実に打ち砕かれることになります。しかし人はその本質からロマンを追い求める生き物でもありロマンを捨てることはできないのです。

以降、「大人の哲学」で失恋や絶望、ニヒリズムなどについて述べられているので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

感想
本書を書く上で著者が参考にした哲学者にも生きることに対していろいろな考えを持った人はいると思いますが、著者のスタンスとしては、人間として生きる上で味わう楽しさつらさをすべて含めて生きることの醍醐味とし、人生を肯定するということでは一貫している人生賛歌の本であるように思いました。 人は自分の人生にロマンを抱きつつも挫折の中で大人の知恵としてロマンを現実に適応させて生きていきます。でも、ロマンをもてなくなってしまった大人は救いようの無いバカ、という著者の言葉がありますが、この理想と現実への適応とのバランスは、人が生きていく上で本当に難しい問題だと思います。 本書で述べられている、どんなに挫折を味わってもロマンを追い求めずにはいられない人間性、と、他者との関係の中から自分を作り上げそれに悦びを見い出す人間性、のお互いをカバーし合うことが、本書に込められたよりよく生きるための知恵なのかもしれません。
ちなみに自分が本書を読んだ当時はちょうど失恋中だったのですが、直接自分にとって救いになるような言葉はないものの、本書では(恋愛を含め)人生に強くロマンを抱かずにはおれない人間を肯定しており、ロマンが挫折にぶち当たっても究極的には人との関係性の中でしか人は喜びを得られないという示唆は、ちょっとずるいと思う反面、たとえ報われなくとも人に想われたいという気持ちは肯定されてもいいんだなという安心感を与えてくれたのを覚えています。

Posted on 2007/09/23 Sun. 17:19 [edit]

category: 読んだ本

tag: 感想  要約  竹田青嗣  読書 
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23

入門! システム思考 

入門! システム思考 (講談社現代新書 1895)入門! システム思考 (講談社現代新書 1895)
枝廣 淳子 内藤 耕

講談社 2007-06-21
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☆☆☆☆
ビジネスや組織活動において、様々な問題を解決するために50年代にMITで考案され、GEやGE、デュポンなどの企業で取り入れられ成果を挙げているという”システム思考”を紹介した本です。最近は様々な問題解決の本が書店で見られますが、本書で取りあげられているシステム思考は複雑に絡み合った要素の"因果関係"を解き明かすことに重点をおいていて、問題を明快に分解して確実に論点を絞り込んでいく分析的な論理的問題解決法のような明快さはないものの、原因→結果→原因など原因と結果が相互に影響を与える関係や、時間差を伴って現れる関係など、意識しないと気づきにくい問題の構造が、環境問題から習い事が続かないなど身近なケースまで様々な例とともに紹介されています。今より少し広い視点から問題を考える癖を磨くためのよいきっかけになる本ではないかと思います。

本書で紹介されているシステム思考で用いられるツールは2つあります。
 1 ) 時系列変化パターングラフ
 2 ) ループ図
1)のマップは自分が改善したいと思う要素やそれに関連すると思われる要素を縦軸に、時系列を横軸にとったグラフで、グラフ中で過去の軌跡、このままだとたどると思われる軌跡、望ましい軌跡をみいだします。 このツールの主な目的としては時間的な中で因果関係を考えるきっかけになることが挙げられ、近視眼的にならないように時間軸は長く取るのがコツだそうです。
次のループ図はシステム思考の基幹ともいえるツールで、それぞれの要素の因果関係をグラフでつないでいくことによって関係性を可視化します。グラフでは要素間の因果関係の他に、その因果関係がプラスに作用するのかマイナスに作用するのかも同時に書き込みます。そしてできあがったループ図からループするパターンを見出します。現在の変えたいと思う状態は何らかの因果関係がループ上に働くことで悪い方向に向うか悪い状態にとどまってしまうと考えるのがシステム思考の特徴でしょう。そして見出したパターンの連鎖を止めるためのポイントを因果関係から見つけて対処することでひとまず解決となりますが、解決は往々にして予想もつかない所から次の問題の発生につながっているため、こうした因果関係を常にチェックすることが大切であるとしています。
そして次に、システム思考から導かれる知恵として、今日の問題は昨日の解決から生まれる、解決のつぼは解決とは一見遠いところにある、問題パターンはあくまで構造が引き起こしている、人や自分を責めない、世の中には副作用はなくあるのは作用だけ、システム思考はコミュニケーションツールでもある、などが紹介されています。他にも、強者はより強くなる、共有地の悲劇、成長の限界、などシステム思考を通じて頻繁に見られる因果関係のパターンも紹介されています。
こうしたシステム思考を実問題に用いる際に大事な点は、システム思考をコミュニケーションに用いることであるとしています。チームで問題に取り組む際にはメンバーと問題点を共有化することがまず解決のための第一歩になるのですが、このように因果関係をグラフで表すことで問題の構造を共有しやすくなります。そして問題を属人的な原因として捉えるのではなく、あくまで構造から起こるものだと考えることを促し、より効率的にメンバーで解決策を練ることに専念することができます。

本書で述べられているシステム思考の要点を自分なりにまとめると、時系列を交えた因果関係のループパターンを見つけ出す、ことに尽きると思うのですが、問題解決のアプローチとして問題をループ(悪循環)に絞っていたのは少し新鮮でした。そして悪循環を見つけるためには物事の因果関係を幅広く把握しないといけないのですが、そのためのシステマテックな方法までは本書では述べられていません。やはり問題を解決するためにはある程度のセンスや努力が必要なのでしょうが、本書は因果関係はいたるところに存在していることに気づかせてくれます。そうした気づきから少しずつ考える癖が生まれてくるのかもしれません。
ただし本書でも少し紹介されていた因果構造の頻出パタンはいろいろとあるそうで、同じ著者がそれらをまとめて書いた「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?」という本があるそうなので機会があればそちらも読んでみたいです。

Posted on 2007/07/20 Fri. 00:12 [edit]

category: 読んだ本

tag: 感想  要約  読書  システム思考 
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20

iPhone 衝撃のビジネスモデル 

仕事の関係でケータイ関連についていろいろと興味を持って読んだ本の紹介を。
iPhone 衝撃のビジネスモデルiPhone 衝撃のビジネスモデル
岡嶋 裕史

光文社 2007-05-17
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☆☆☆★
本書は最近流行のiPhoneを題した本なのですが、既存の携帯電話に対するiPhoneの優位点だけではなく、PCを中心としたWeb2.0的なビジネスに対して携帯ビジネスが持つビジネスモデル上の優位点などが述べられている点が面白かったです。
内容的にはそれほどボリュームがあるわけでもなかったので評価は3.5としましたが、この本で述べられている点はとても明快で、携帯の持つ、ビジネスモデル上の優位点と、デバイスが持つインタフェースがこれから重要になる、ということに集約されます。
ビジネスモデル上の優位点としては、Webで支払いをするためにはクレジットカードの番号などを入力する必要があるのに対して、携帯で買い物をする場合、支払いを携帯代金に上乗せして済ませることができるため、手間やプライバシーなどを気にかけることなく気軽にできることを挙げています。 こうした気軽にできる支払いなどから、コンテンツの無料化が進むWebに対して、良いコンテンツに対してはお金を払ってもよいと考えるユーザが相対的に多く存在し、携帯Webでは今のところコンテンツ販売が成り立っており、それによるコンテンツ市場の拡大が更なる革新的なサービスを生む機会となるのではないかとしています。
韓国でオンラインゲームが発展した理由としては、若年者でもコンテンツ使用料を携帯電話の料金に上乗せでき、気軽に支払いができることから利用者の拡大につながったことが大きな理由として挙げられているのを読んだことがあるのですが、確かに気軽に支払いができるということはあなどれない大きな利点でしょう。
次に著者が強調しているのは、携帯が持ち運び可能でいつでも利用できることからユーザの利用機会がPCに比べて大きい点、そしてユビキタス社会の統合インタフェースになるのではないかとしている点です。これまでユーザは様々な電器機器が発売されるたびにその使い方を覚える必要に迫られ続けてきたのですが、これからくるとされるユビキタス社会では、現実世界のいたるところにアクセス可能な機器が存在するようになり、それぞれの操作法を覚えようとするとますます使いこなすための労力が増すと考えられます。そこで携帯がそれらすべての機器にアクセスする際の玄関となるインタフェースとなれば、携帯の利用機会は爆発的に増えるのではないだろうか、と著者は述べています。カメラやマイク、加速度センサなどの共通の規格のデバイスを組み合わせれば、様々な情報へ言語以外の問い合わせからアクセスすることができるようになり、そのためにインタフェースのデザインが携帯の使い勝手の決め手になるのではないかとしています。 そうした流れになれば、ユーザインタフェース分野では昔から強みを持つアップルが携帯電話業界で台頭する可能性も大きいのではと予測を立てています。
ここで述べられている、携帯がユビキタス時代の総合窓口になるという考えは、面白いもののそれが実現するにはまだだいぶ時間がかかりそうに思います。 それよりもこの本で印象に残ったのは、ユーザがコンテンツを作る際の金銭的なインセンティブが無ければ、Web2.0は大企業に富が集中する広告モデルに行き着き、ユーザの自発的なコンテンツ提供が減衰していくのではないか、と著者が投げかけた疑問でしょうか。著者は、コンテンツ課金が成り立っている携帯ビジネスで今後さらにユーザが作るコンテンツが発展していくのではないかとして結んでいますが、一般人が作ったコンテンツから利益を上げられるような時代が来るのかどうかは非常に興味深い命題だと思いました。

Posted on 2007/07/11 Wed. 23:46 [edit]

category: 読んだ本

tag: 感想  要約  iPhone  ケータイ  読書 
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11

技術の伝え方 

組織を強くする技術の伝え方組織を強くする技術の伝え方
畑村 洋太郎

講談社 2006-12-19
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☆☆☆★
感想
技術を伝えるための具体的なコツなどについて多く述べられているため、普段あまり意識しなかった知識の伝え方や説明のしかたなどをあらために意識する意味でもとても有意義な本だと思います。また人によく伝えることを考えることは、いかにしてひとが理解、上達するのか、ということを考えることにもつながり、伝える側から考えることで自分の技術や知識の研鑽するための補助にもなります。
ただ、自分的には、具体的な示唆は多いものの、説明される示唆の順序が断片的であったり、ちょっとまとまりがなくて読みづらかったように思えたことと、述べられているアイデアは具体的ではあるものの目新しさという観点からは地味でもあるため、私的評価は☆は3個半としましたが、自分の行動を振り返るきっかけにもなり、伝えるための考え方を整理する意味でも面白かったと思います。

要約
団塊の世代の退職によって企業を支えてきた技術が産業界から失われてしまう2007年問題が騒がれているが、世代間に限らず、技術を人に伝えて再生産していくための方法は重要である。ここで本書で述べる技術の定義であるが、「知識やシステムを使い、他の人と関係しながら全体を作り上げていくやり方」とする。技術とは個人の中で完結する技能ではなく、人に伝えることも可能で、複数の人が持つ知識を組み合わせることでより規模の大きいものも作りあげることも可能となる。そのためにも他の人に知識を共有するための伝え方が重要になる。

技術を伝える相手としては、世代的、場所的、時間的に離れた他人、あるいは未来への自分、などのケースがある。企業における競争環境の変化による配置転換など、人の移動が起こり、移動後でもその人の持っていた業務がスムーズに移行できるようにする必要性がある。定期的に伝達のために暗黙的な技術を明示化する必要に迫られて技術が残り易いというメリットがある反面、技術自体が失われるデメリットも考えられる。また企業間による技術移転では、人を介さない形で技術が伝えられると考えられがちであるが、実際には現場の気を含めた雰囲気も重要であるため、直接的な人による指導が欠かせない。技術を伝える必要性としては、技術を後の世代に伝えることで無駄な試行錯誤を避けることで効率的に発展を図ることができることとが挙げられる。もう一つで重要なのが、中途半端に技術が伝えられると、六本木の回転ドアにおけるドアの重さの重要性や、JCOの核燃料における形状管理など、暗黙的で重要な知識が正しく理解されていなかったために、大損害を起こすリスクがある。最近ではコンピュータによるシミュレーションによって開発コストを大幅に下げるシステムがあるが、その現実の裏にある暗黙的な知識を見逃す恐れがあることを念頭においておかなければならない。

そのために企業などでも社内研修などで社内の技術を効率よく伝える試みが数多くなされているが、実際にはなかなかうまく機能していない。技術は本来伝えるものではなく、伝わるものであり、伝えられる側の立場で考えた「伝わる状態」をいかに作るか、に最も力を注ぐべくである。マニュアルなどは最初はシンプルであっても、環境の変化に応じて分量が増えてしまう宿命にあり、本質だけを抽出する作業が忘れられがちでもある。分量が増えると読むのも面倒になり、その結果、マニュアルの無視という最悪の結果に陥ることもある。伝えるための方策として、試験などを課すという強制的な手段もある。これはムチとして効果的でもあるが、やはり自発的な興味に及ぶものではない。人に知識が伝わる時というのは、相手の頭の中にある知識の構造が自分の持つ構造と(ほぼ)一致することでもある。もし説明を受ける側でそのような知識の構造を持っていなくても、経験豊富な人は似たような構造を当てはめることで理解を得ることができる。このようなことから説明する側は相手の持つ知識の構造に応じた説明をしなければならない。 失敗経験を集めたデータベースがあまり機能しない理由は、原因と結果だけしか載っておらず、原因によって、当事者がどのような行動を取ったかがわからないため、その知識を活かせないことが考えられる。伝えられる側が理解しやすい形でデータベースを作ることを考えることが重要である。

次に伝える側に知識や技術を受け入れる素地を作るための方策であるが、 知識をうまく伝えることができるかどうかは、相手の知識を吸収しようとする意欲に大きく左右される。そのため、相手に自発的に知識を得たいと思うように仕向けることが大切である。以上のことを踏まえて、技術を伝えるために必要だと思われるポイントとしては以下の5つが挙げられる。
1) まず体験させる
2) はじめに全体を見せる
3) やらせた結果を確認する
4) 一度に全部伝えない
5) 個はそれぞれ違うことを認める
1.は実際にやってみることでもっと知りたいという具体的な欲求が出てくること、2.は全体を見せることで今自分がやっていることがどのような役割を果たしているかがわかる、3.は初めて経験する人は結果の良し悪しがわからないので評価基準として教えること、4.は知識は階層的な構造を持っており、それぞれの段階にあった教え方をするべきであること、5.は理解の方法は人によって違うので伝える側はそれに応じる工夫をすることを忘れないこと、となっている。 基本的に技術や知識は自分が欲しいと思ったところをむしり取るくらいの方が身に付くものであり、そうした場を持つことが大切である。

伝えるものには、知、技、行動、の3つの種類がある。知は生産活動に必要な知識であり、技は様々な作業についてまわる技能的な行動や判断で、行動は技とも呼べない行動のことで安全などがこれに該当する。これに加えて特に意識しないで伝わるものとして、価値観や信頼感、責任感といった企業文化や気といったものも重要である。 また伝える知識にも階層性があるが、企業の階層性や技術の決まりごとなどにも階層性があり、これらは関連しあっていて、この関連性が理解できるようになると全体的な立場で考えることができ、伝えるべき知識を伝えなかったなどのミスが防ぐことができる。知識を伝える時は客観的になることが大事であると考えがちであるが、そうした観点からは暗黙的なことが忘れられて伝えられるものが無味乾燥なものになってしまうので、こうした知識の構造がわかっていれば主観的に伝えることも重要である。また暗黙的な知識は伝える際に忘れられがちであるため、そうした暗黙知を明示化することが大切になってくる。 人に伝えるためにまず大切なのが受け入れの素地を作ることであるが、これが上での1.2.に相当する。受け入れる素地ができあがった後の伝え方としては、3.の結果を確認させることが大切になるが、そのためには、伝えた相手にその内容をアウトプットさせて結果をフィードバックするのだが、アウトプットをさらに他の人に教えるという形式で行うことで、他人に伝えることを意識することで曖昧でない体系的な理解が得られるメリットがある。2.の全体を見せることも大切で、技術の思考展開図やスケルトン図などの体系的に得た知識を全体の中でマッピングすることなども効果的である。 また伝えたいことをうまく伝えるにはイメージを伝えることが効果的で、自分の体験の中で得たイメージを相手に伝えるのであるが、人のイメージの基となる体験は人それぞれなので、相手の持っているイメージに沿うように、伝える側は試行錯誤する必要がある。

人に技術や知識を伝える際には、強くイメージ喚起を促す写真や画像を利用することが非常に効果的である。しかしそうした画像は情報が多すぎることが多く、要点を抽出して伝えるためにも言葉で補完するなどの工夫が大切になる。その際、伝える側としても伝える内容を図にするためには深い理解が必要となる。また伝える内容として、やるべきことだけを伝えると表層的な知識しか伝わらないこともあるが、何をしたら失敗するか、この技術が生まれる過程でどのような失敗があり試行錯誤があったのか、といった技術の生まれる過程や背景、文脈を多面的に伝えることができれば、伝わる知識もより深みのあるものになる。

一人だけが技術を身につけても組織としては大きな成果は出すことはできず、さまざまな人が知識や技術を組み合わせることが重要となる。そのためには個人が責任を共有することが大切で、個人がそれぞれの考えを持つための独立性が担保されなければならない。そうした上でそうした個人知を共有するためには、互いが持っている個人知を表出する場を設けることが有効である。その際に各個人知がしっかりとしたものであるためにはその場に集う以前に各人がしっかり考える必要がある。各人がしっかり考えてきていれば、相手のアイデアもある程度考える経路がわかるためスムーズに知識を共有できる。そうした知識を共有するためには、普段からその人と接していると、その背後にある思想や価値観などがわかるため、さらにスムーズに相手の知識を理解することが可能となる。また、共有知だけが重要というわけではなく、各個人知の重複が少なければそれだけ知識の広がりが大きいわけで、共有するための伸びしろは大きいということになる。なのでさまざまなバックグラウンドを持つ人でチームを組めばそのプロジェクトは発想豊かなものになるだろう。

Posted on 2007/01/21 Sun. 02:28 [edit]

category: 読んだ本

thread: ブックレビュー  -  janre: 本・雑誌

tag: 読書  感想  要約 
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