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Orfeon Blog

読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。

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スモールワールド・ネットワーク 

スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法スモールワールド・ネットワーク―世界を知るための新科学的思考法
ダンカン ワッツ Duncan J. Watts 辻 竜平

阪急コミュニケーションズ 2004-10
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☆☆☆☆
"世界は6人でつながっている"、というフレーズで有名なスモールワールドなどの、ネットワークの科学における著名な研究者である著者の自分の研究の成り行きを中心に展開するネットワークの科学を紹介した本。

 まず、最初に著者がスモールワールドに興味を持ち、世界が6人でつながるには、各個人が知り合いを10人でも持てば10の乗数でネットワークが広がるのだが、実際には友達同士で知り合いを共有する場合がほとんどで、はたしてそれでもうまいこといくのかというところから、人がランダムに知り合いを選ぶ場合と知り合いとの関わりがあるほど選びやすいという、両極端のモデルを作って観察したところ、その中間付近のところで任意の2人を結ぶパスが短くなる領域があることを発見しました。
 さらにシンプルに考えるために1次元の円上に人が並び、それぞれその両隣100人までを相互につなぎ、ランダムにリンクをつなぎ換える確率を動かしていったところ、パスが短くクラスタリング係数が高い(知り合いとしかリンクがない)領域が広く存在することが確認されたことの説明がなされています。

しかし上で唱えられたランダムネットワークに対して、別の研究者が、金持ちはより金持ちになるという格言にならうような全く別の結論を出してきた話がでてきます。それはスケールフリーネットワークと呼ばれ、ノード数が増えて、リンクはそのノードがすでに持っているリンクの数に応じた確率でつながれるというモデルでした。このモデルはWWW上のサイトなどランダムネットワークでは説明できなかったものをよく説明しました。しかし実際にはノードは有限であることや、WWWのように他のノードの情報が容易に入手可能な状況ではよいモデルであるが実際の社会モデルでは適用が困難であることを述べ社会における集団構造を取り入れる必要性について述べています。

これまでのモデルはリンクをたどるだけでつながるとしていたが、実際に6人でつながると言ってもある特定の人にメールを出すことを考えると中継を経るごとに指数的にネットワーク上に伝送が溢れてしまって使えないことをP2PのGnutellaを例に出して考えています。この場合ではあくまで一方探索という制約の元で考えるが、集団構造を取り入れることによって人が2つ以上の異なった距離空間を持った集団に属していればスモールワールドが成り立つことを実験してみせています。

そのあとは伝染病の拡散をネットワークに当てはめて言及していて、伝染病は感染者の割合がある閾値を越すと爆発的に広がるのであるが、これは最初に述べたランダムネットワーク上のように近隣の人ばかりしか接しないような状況ではほとんど広がらないが少しのランダムに他の遠い場所までつながるパスがあれば広がる可能性が強まることを述べています。つまり他の人とのつながりが多そうな人の対策をしておけば爆発的な広がりは防げるとしています。今度は逆にルータの不具合の拡散の仕方について適用した場合、クラッカーは重要なハブを狙い撃ちするのでWWWはネットワーク構造上効果的にやられやすい脆弱性をかかえていることを述べています。

今度は人の意思決定をネットワークにあてはめて考えています。人は何かを意思決定する際にある程度他の人の意見を聞くといい、その時の原理として、他人の方が情報を持っているはずだという「情報の外部性」、社会的な圧力による「強制的外部性」、ゲーム機のプラットフォームなど、他の人が使っているほどそれが経済的に効果を持つようになる「経済の外部性」、最後に、直接的には自分の利益には反するがみんなが使うようになれば意義がある行為を選ぶ場合の「同調の外部性」について述べています。こうした人の意思決定において、どのようにしてブームが起こりうるのかをモデル化して説明しようとしています。人には先駆的なユーザとそれに乗じるユーザなど、周りの他のユーザに影響されやすさを分布を仮定すると、各ノードに接する平均ノード数が1人以上である程度以下であり、各ノードの他のノードに影響されやすさが大きければ、ブームが起こるとしています。しかし周りのノード数が大きくて影響されやすさが小さい場合はブームは起こりにくいが、あるクラスタ構造を持ったノードが最初に発火するとブームになる可能性があることも述べています。

今度は会社などの社会的な組織構造についてのネットワークについて述べています。組織の根本的な構造として階層構造を前提におき、各ノードがリンクを維持するのにコストがかかると仮定して、これらの組織ネットワーク構造において情報をより少ないコストでより短いステップで効率よく伝達するには各階層で、下の階層では疎ではあるが互いにリンクをとり、上層部では密にリンクを持ち、また各階層間でもリンクを持てば最初のランダムネットと同じ要領で効率よく短いステップであらゆる情報にアクセスできるとしています。

本書はネットワークの原理があらゆるところに潜んでいて、さまざまな事象にネットワークを当てはめることがでいることを教えてくれます。実際様々な分野に話が及んでいて一つの原理が広範囲にまたがっているのをみるのはとても興味深いです。ネットワークの科学はあらゆる分野にまたがっているがゆえに様々な分野の人と協力することが重要であるらしく本書でも新しいことを始める際はまず誰かの協力を得るところから説明が始まっています。学融合が叫ばれる昨今、これからはいろいろな分野の研究を統合して行く方向に進んでいくのかもしれないので様々な分野を横断して考えられるように知識を蓄積していきたいものです。
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Posted on 2006/09/30 Sat. 18:58 [edit]

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30

Winnyの技術 

Winnyの技術Winnyの技術
金子 勇 アスキー書籍編集部

アスキー 2005-10
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☆☆☆☆☆
いわずと知れた有名ファイル共有ソフトの開発者によるWinnyの技術論。

本書は6章で構成されていて、1章ではWinnyのバックグラウンドであるP2Pについての簡単な説明がなされています。その中でファイル共有ソフトを第1世代~第3世代までで分類していて、第1世代をNapstarを代表とする中央にサーバを置いて情報の流通を管理する世代としています。第2世代は中央サーバはなくなりP2Pに近づいたものの、ネットワークに検索依頼情報が溢れてしまって破綻したGnutellaを引き合いに出しています。第3世代として中継を利用したシステムを特徴とするシステムを挙げ、Winnyをここに分類しています。

2章ではWinnyの基本的なコンセプトとなる中継のアイデアの元になったFreenetを紹介し、ファイルデータをネット上に分散させることによって完全に秘匿性を守る可能性を開いたことを述べています。しかしネット上にデータ自体を分散させるのは効率的にはまだ改善の余地があることを述べ、Winnyではファイル自体をまず分散させるのではなく、それよりもサイズの小さいインデックス情報としてキーを流通させ、そのキーをもとにファイルの情報を得てファイルの持ち主のノードにダウンロードを要求し、その過程でファイルが分散してネットワーク上に広がっていくアイデアを述べています。このアイデアの元としてプロキシサーバを挙げています。

3章からはより具体的なWinnyのアイデアについて述べられていて、Winnyの構成ネットワークの特徴として、回線速度能力によるノードの階層化が取り入れられていて、より高速な回線能力を有するノードはそれだけ中継能力が高いとして上位の階層に属し、キーの拡散は常に上位のノードに広がるようになっていて、下位のノードは上位のノードに検索メッセージを投げることによってキー流通の効率化を図っている説明がなされています。またキーもノードをわたり行く過程でキーのファイルアドレスを書き換えることで効率の良いファイルの分散を目指していることの説明もあります。また嗜好が近いノード同士が検索接続が増えるような工夫についてや、多重ダウンロードについても簡単に説明があります。

4章ではさらに込み入った実装の話に入り、具体的にどのような指標を用いて接続先を選ぶのか、ノードの嗜好の相関度の計算方法、効率よくキー情報が流通するためにどのようなキーの拡散、検索ルールが作られているのか、自動ダウンロードの仕組み、またキャッシュファイルの構造についてより細かく説明がなされています。

5章では開発にあたってどのような試行錯誤がなされていたのかを述べていて、最初の構想段階ではシミュレーションを行いながら設定を考えていたことや、バージョン情報の更新に付随する互換性について頭を悩ませたこと、有名になってきた頃から始まった攻撃に対処したこと、特に暗号化について苦労したことが説明されています。Winnyがクローズなのはフリーライドを防ぐための対処であったことも書かれていました。最後には今後のP2Pソフトの発展には匿名性が重要であることを述べています。

本書はあまりWinnyやP2Pを知らなくても理解できるほどわかりやすい説明でした。実際自分も本書を読むまではファイル共有ソフトは使ったことがありませんでした。こうしたバックグラウンドの技術を知ればこうしたソフトをもっと使いこなせるように思います。3章くらいまで読めば基本的なアイデアを知ることができると思います。こういったP2Pだとよく囚人のジレンマ的な話が出てくるように思います。著者も全体の最適化を考える際にいつも各個人が己の要望を最大限に実行した場合を念頭においているようでした。こうしたことから匿名性の重要さもさることながら、各個人の行動がネットワーク全体の最適化につながるようなアプリケーションの設計を考えることも大切なんだなあと感じました。このWinnyは理想的な完全分散型のP2Pを志向していたようにも思うのですが、(あまり知らないのですが)他のWinMXなどのファイル共有ソフトは中央集中的なシステムも利用しているようで、Winnyの開発がストップしていることもあり、今後P2Pは完全な分散システムではなく、中央集権的な要素ともうまく共存しながら発展していくのかもしれません。

Posted on 2006/09/29 Fri. 18:59 [edit]

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29

組織戦略の考え方 

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために
沼上 幹

筑摩書房 2003-03
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☆☆☆★
企業における組織とはどうあるべきかを、そこで働く人の心理を中心に考えて述べられた本。

昨今では官僚型組織は諸悪の根源であるかのように言われているが、企業などの組織においては官僚型組織、階層的な組織というものは、日常の業務をスムーズに行うためには必要不可欠であるとしています。下の階層は日常の業務をこなし、例外的な処理を上の係りが担当し、トップは大局的で長期的な判断を行うために日常の仕事で忙殺されてはいけないことを述べています。

次に、組織構成において最も注意をしなくてはならないことはボトルネックを作らないことであるとしています。ボトルネックが存在すると常にアウトプットはその部分に制約されてしまうため、ボトルネックを解決するように各部署での仕事に変化を持たせるべきであるとしています。それは生産工程にのみの話ではなく、意思決定などの場合でも、なにかの決定を出すための人間が他の付加価値のない作業に追われて本来の仕事に専念できずに無駄が生じることの危険性などを説いています。

次に組織デザインについて、一般に組織を「職務別組織」、「事業部制組織」、「マトリックス型組織」の3つに分類しています。職務別式は規模の経済が追求しやすいが細かい戦略を立てるのが困難になるなどの柔軟性に欠ける。事業部制は一つの戦略に従いやすい仕組みであるがその分統合によるシナジーが薄れることを述べています。両者のいい所取りのマトリックスについては、各事業部長と職務長の兼任の話し合いによって連合を図るものであるが、その際の問題は組織の問題ではなく、人の問題に属するもので、組織のデザインに頼りすぎて人事の重要な決断を鈍らせる言い訳になっているとしています。

多くの企業ではポストや報酬が限られている中で多くの社員に満足を与えるためにマズローの理論を都合よく解釈して自己実現という言葉で誤魔化しているとしていて、報酬やポストで報いられなくてもその他の承認欲を満たしたり新しい心理的な報酬につながるようなものを考案するべきであるとしています。

組織が疲弊する原因として、社員の中に公共財産にただ乗りする割合が増えることの問題点を述べています。これを押さえるには不利益を被れる責任感をもった人物が必要であるとしています。そこで これを解決するにはみんなが責任ある地位につける気にさせることのできたいままでの日本的経営から、一部のエリートに将来の明るい展望を確信させることで強く責任感を持たせることと、ノンエリートとの間をカバーする中間管理職のモチベーションを高める心理的な報酬を考えることが大切であるとしています。
日本ではこのようにみんなのコンセンサスを取ることが重要視されていたので誰かの嫌がることをおこなう決断ができる人がトップも含めて少ないことが問題であるとしています。

組織の構成における権力の位置付けとして情報の重要性を指摘し、トラの威を借りるキツネを引き合いに出しています。複数の異なる志向を持つ部署の間を取り持つ時に、その間の仲介となる人には情報をお互いが離れるように操作して自分に力が集まるような権力が生じうる危険性を述べています。こうしたことは争いを避ける姿勢から生じるものなのでもっとまともな議論ができる土壌が必要であるとしています。

組織が腐敗する時というのは主に会社のルールが昔のルールを壊せないためにそれを少しずつ付け足していく形になり複雑化が進むことと、成熟事業部において優秀な人が余ってしまい、彼らがその余った力で社内政治に精を出すこと、が表面化するといいます。こうした腐敗が進んだ組織を直すにはトップダウンの強力なリーダーシップで複雑化した社内ルールをシンプルにして、人材配置で優秀な人を部署に分散させ、社内政治に精を出さずに外向きに力を発揮できるように仕事を割り振ることが大切であるとしています。

この本では理論的な組織デザインよりも、人の行動心理を考えていかにして内向きに力を向けないようにするかが大切であるとしています。また組織が腐敗するのは当然であると考え、腐敗が進むたびにトップが強権を発動して改革をなす必要があるというのも常識的で、そういう意味では本書は常識的なことがいかに大切であるかを強調するものであると思います。人というのは優秀であるほど、それが組織の目的に沿っているかはともかく、要領よく仕事を作りたがると言うのは普遍なのかもしれません。そのためにトップがいて、変わり行く組織の人材配置において内向きに頑張る人が少なくならないようにすることが大切なのでしょう。また本書では優秀な人というのは組織のごく一部しかいないもので、そういう人たちを他と区別して考えていたのが印象的でした。この20対80の法則というのも普遍的なのかもしれません。

Posted on 2006/09/28 Thu. 16:42 [edit]

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28

数学に感動する頭をつくる 

4887593155数学に感動する頭をつくる
栗田 哲也

ディスカヴァー・トゥエンティワン 2004-07
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☆☆☆☆
僕はあまり数学が得意ではなかったので、数学が得意な人はどういう考え方をするのだろうということに興味を持って読んでみました。ちなみに著者は数学オリンピックのトレーナーで、自分の経験やトレーナーの目から見た、数学のできる子は何が違うか、について説明しています。

著者によると一言に数学力といってもいろいろな能力を駆使するのが数学であるとしながらも、その中でも特に重要な能力として”イメージする力”と”知識を体系立てて理解する力”を挙げています。イメージする力について、幾何問題を解くにしても、紙を使って解けるのであれば、頭の中で同じことをイメージして解けても別段意味がないと思われがちだけど、実際にイメージできると、質的にも想起できる発想が格段に向上するし、数も増えるそうです。そのため著者は幾何問題に限らず、数学の問題は紙を使わないようにして解くことを勧めています。
次の知識を体系立てて理解する力とは、問題を解く場合、いろいろな解決方法を模索するわけですが、難しい問題というのは様々な領域の知識が入り混じっているもので、そうしたなかで適切な知識を想起しないといけないのですが、その際に知識を上手く引き出せる人というのは、頭の中の知識が相互に結びついていて、かつすっきりした形で整理されているそうです。そうした体系が出来ている人というのはまず、理解する際に頭のなかにある知識となるべく結び付けようとしているそうで、理解した後も得た知識がいままで自分が作ってきた一貫した知識体系にちゃんと入るように構築しているそうです。
こうした理解の仕方がなぜ有効だろうか、ということに、何問か実際に問題を出しながら、こういう考え方だと理解しやすいだろう、といったことを納得しやすいように説明しています。

自分は受験時には、数学に関してはパターンを詰め込んで解くというやり方だったので、こういう考え方とは無縁でした。よくよく考えてみるとパターンを詰め込むというのも、きちんと理解するのが難しかったというのもあるでしょうが、自分の場合根本にめんどくさかったからというのがあるように思います。 全ての思考作業について、やはり怠惰というのは最大の敵なのでしょう。
この本を読んだ、理解を他の知識と結びつけて体系的に理解することの大切さというのは数学に限らず有効だと思いました。またイメージする力ということには、紙を使って考えればビジュアルに考えられると思っていたので、ここで言っていたように、頭の中だけで問題をイメージすることの大切さというのはとても新鮮でした。 今から努力しても効果薄かもしれませんが少しでも自分の糧になるように取り入れていきたいです。

Posted on 2006/09/27 Wed. 16:41 [edit]

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27

世界の大学危機 

4121017641世界の大学危機―新しい大学像を求めて
潮木 守一

中央公論新社 2004-09
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☆☆☆☆
海外の大学について、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの4ヶ国について、どういうふうに成り立ったかを説明しています。
イギリスの大学は、もともと神父を育成するところだったらしく、ジェントルマンにふさわしい教養を身に付けるために、日本での通学とは違い、教師との寮での共同生活が行われているようです。オックスフォードやケンブリッジなどがそうした旧来の教養を身に付けることに力点を置いており、そこに通う学生も高階級の子供ばかりだという批判や、旧来の有力大学は独自に資金源を持っているため、教育側での競争がなく、教育のレベルが向上していないのではという批判も高まり、その後イギリスでも産業界との連携を強化したロンドン大学など新しい大学が生まれていきます。最近では独自に資金源を持たない大学においても国の税金によって補助金が与えられるようになり、資金はそれぞれの教育や研究業績によって配分されるため競争が発生し、よりよい向上が期待されているそうです。

ドイツの大学は、研究に力を入れ、研究によって教育を行うという方針を定め、イギリスとは違い通学生を取り入れます。講義は実験室を通じて行われ、教授にも教育よりも研究成果 をだすことが求められ、また高い業績を上げる教授には優れた研究室が与えられたそうです 。そうした甲斐あって、20世紀最初にはドイツの大学は世界最高峰の研究大学となります。 しかし、その後は戦争によって優れた研究者がアメリカに亡命してしまったり、アメリカが研究大学をさらに一歩進めた大学院を発明することによって急速にその地位を低下させていったようです。また教育について、ドイツの大学は日本のような受験というものがなく、ギナジウムという日本の高校に当たる学校を卒業していればどこの大学にでも入れるそうです(しかも授業料は税金でまかなわれるらしいです)。ドイツでは大学は国民に平等の教育機会を与えるべきだという方針があるそうですが、平均化が大学の質を低下させる一因であるとして最近では一部の優れた研究を行う大学に対して優先的に資金を割り振ろうという動きもでてきているようです。

フランスの大学は、ドイツの大学と同じく、日本の高校に当たる教育機関を卒業すれば好きな大学に進学することができるそうですが、これはドイツのような方針ゆえの結果ではなく、不況などによってとりあえず大学に進学を希望する人が増えたものの、税金で運営されている大学にまわす予算がなく、大学の入学を選抜試験などで入学者を制限しようとすると、大きな政治力を持つようになった大学生の猛烈な反対に会い、政治家は大学問題に立ち入らなくなってしまったそうです。その結果、人数の増えすぎた大学は設備的にも満足いくものではなくなっているそうです。またフランスではエリートの育成機関は大学ではなく、グランゼコールという機関が担っているそうで、こちらは激しい選抜競争が存在しているそうです。この教育機関を卒業したものによってフランスの政治や経済が動かされているそうです。

アメリカの大学は、最初はイギリスの大学をまねたものを作ったのが、あまり上手くいかず、大学の大衆化や統一的な大学をまとめる組織がなかったため研究や教育レベルは当初はヨーロッパのそれよりかなり低かったそうです。しかし研究力を武器にするために、現状の教育機関である大学を維持しながら、研究を中心に添えた大学院が創設されるにいたって、アメリカには優秀な研究者が集まってくるようになります。アメリカはとてもビジネスライクに、つまり競争を研究にも取り入れ、優秀な研究者にはそれなりに報いるため、優れた研究者が集まるようになります。しかし、大学院の普及も当初はなかなかうまくいかず、苦労した場面も紹介されています。

先進国では大学の大衆化が進んできており、昔と違って様々な階層から学生が集まるようになったのですが、大学は教育の平等性を守りながらも、研究の卓越性も維持しなければならず、そうしたバランスをとることが肝要であると筆者は言います。また大学は誰にとってもと同時に、いつでも人が教育を受けなおすことができるようにすることがこれからの進むべき道ではないかとしています。

日本では大学の意義についてとりだたされることが多いのですが、日本だけではなく、世界でも教育というのは難しい問題を抱えていることがわかりました。本書では欧米の大学を例に挙げていましたが、ヨーロッパでは日本以上に平等が重んじられているように感じました。 こうしてみるとペーパーテストとはいえ、日本の大学も実力主義であるように感じられてしまいます

Posted on 2006/09/26 Tue. 16:40 [edit]

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