fc2ブログ

08 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.» 10

Orfeon Blog

読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。

世界の大学危機 

4121017641世界の大学危機―新しい大学像を求めて
潮木 守一

中央公論新社 2004-09
売り上げランキング : 77,114

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

☆☆☆☆
海外の大学について、イギリス、フランス、ドイツ、アメリカの4ヶ国について、どういうふうに成り立ったかを説明しています。
イギリスの大学は、もともと神父を育成するところだったらしく、ジェントルマンにふさわしい教養を身に付けるために、日本での通学とは違い、教師との寮での共同生活が行われているようです。オックスフォードやケンブリッジなどがそうした旧来の教養を身に付けることに力点を置いており、そこに通う学生も高階級の子供ばかりだという批判や、旧来の有力大学は独自に資金源を持っているため、教育側での競争がなく、教育のレベルが向上していないのではという批判も高まり、その後イギリスでも産業界との連携を強化したロンドン大学など新しい大学が生まれていきます。最近では独自に資金源を持たない大学においても国の税金によって補助金が与えられるようになり、資金はそれぞれの教育や研究業績によって配分されるため競争が発生し、よりよい向上が期待されているそうです。

ドイツの大学は、研究に力を入れ、研究によって教育を行うという方針を定め、イギリスとは違い通学生を取り入れます。講義は実験室を通じて行われ、教授にも教育よりも研究成果 をだすことが求められ、また高い業績を上げる教授には優れた研究室が与えられたそうです 。そうした甲斐あって、20世紀最初にはドイツの大学は世界最高峰の研究大学となります。 しかし、その後は戦争によって優れた研究者がアメリカに亡命してしまったり、アメリカが研究大学をさらに一歩進めた大学院を発明することによって急速にその地位を低下させていったようです。また教育について、ドイツの大学は日本のような受験というものがなく、ギナジウムという日本の高校に当たる学校を卒業していればどこの大学にでも入れるそうです(しかも授業料は税金でまかなわれるらしいです)。ドイツでは大学は国民に平等の教育機会を与えるべきだという方針があるそうですが、平均化が大学の質を低下させる一因であるとして最近では一部の優れた研究を行う大学に対して優先的に資金を割り振ろうという動きもでてきているようです。

フランスの大学は、ドイツの大学と同じく、日本の高校に当たる教育機関を卒業すれば好きな大学に進学することができるそうですが、これはドイツのような方針ゆえの結果ではなく、不況などによってとりあえず大学に進学を希望する人が増えたものの、税金で運営されている大学にまわす予算がなく、大学の入学を選抜試験などで入学者を制限しようとすると、大きな政治力を持つようになった大学生の猛烈な反対に会い、政治家は大学問題に立ち入らなくなってしまったそうです。その結果、人数の増えすぎた大学は設備的にも満足いくものではなくなっているそうです。またフランスではエリートの育成機関は大学ではなく、グランゼコールという機関が担っているそうで、こちらは激しい選抜競争が存在しているそうです。この教育機関を卒業したものによってフランスの政治や経済が動かされているそうです。

アメリカの大学は、最初はイギリスの大学をまねたものを作ったのが、あまり上手くいかず、大学の大衆化や統一的な大学をまとめる組織がなかったため研究や教育レベルは当初はヨーロッパのそれよりかなり低かったそうです。しかし研究力を武器にするために、現状の教育機関である大学を維持しながら、研究を中心に添えた大学院が創設されるにいたって、アメリカには優秀な研究者が集まってくるようになります。アメリカはとてもビジネスライクに、つまり競争を研究にも取り入れ、優秀な研究者にはそれなりに報いるため、優れた研究者が集まるようになります。しかし、大学院の普及も当初はなかなかうまくいかず、苦労した場面も紹介されています。

先進国では大学の大衆化が進んできており、昔と違って様々な階層から学生が集まるようになったのですが、大学は教育の平等性を守りながらも、研究の卓越性も維持しなければならず、そうしたバランスをとることが肝要であると筆者は言います。また大学は誰にとってもと同時に、いつでも人が教育を受けなおすことができるようにすることがこれからの進むべき道ではないかとしています。

日本では大学の意義についてとりだたされることが多いのですが、日本だけではなく、世界でも教育というのは難しい問題を抱えていることがわかりました。本書では欧米の大学を例に挙げていましたが、ヨーロッパでは日本以上に平等が重んじられているように感じました。 こうしてみるとペーパーテストとはいえ、日本の大学も実力主義であるように感じられてしまいます

Posted on 2006/09/26 Tue. 16:40 [edit]

category: 読んだ本

thread: ブックレビュー  -  janre: 本・雑誌

tag: 感想  要約 
TB: 1    CM: 0

26

コメント

Comment
list

コメントの投稿

Secret

Comment
form

トラックバック

トラックバックURL
→http://orfeon.blog80.fc2.com/tb.php/14-5d95c376
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

経済学部の大学受験

こんにちは!突然のトラックバック失礼します。よろしければ経済学部の大学受験について情報交換しませんか?

ドラゴン桜を超えた!? 大学受験勉強法 | 2006/12/11 18:55

Trackback
list