Orfeon Blog
読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。
検索エンジン戦争
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検索エンジンが世に現れた頃は、そのランク付けアルゴリズムがまだ貧弱で、本来とは関係ないページが上位にランクするような工夫を凝らすSEOにやられっぱなしだったそうですが、そのSEOとの攻防を通じて徐々にランク付けアルゴリズムが洗練されていきました。そうした中、きわめて優秀なランク付けアルゴリズムをGoogleが開発して、現在はSEOとの勝負は検索エンジン側のおおかた勝利におさまったそうです。
ネット上における広告活動として、昔はバナー広告がメインだったのが、ネット上で何かを買うための探し物をするときに検索エンジンを利用する人が増えてくるにしたがって、検索エンジンの結果の上位に表示されることの方が重要になってきました。そこでクエリをオークションにかけて、落とした人はそのクエリが入力されるたびに上位に宣伝との表示付きで出現し、クリックごとに落とした値を収めるというキーワード広告が流行り始めました。このキーワード広告では現在はGoogleとYahooの2強が争っていて、Googleの方は検索エンジンとしての公平性を保つために高いお金を積まれても人気のないものは表示しないというポリシーが特長的であるとしています。企業側からはYahooの方が利益に結びつきやすいと評価されているそうですが。また最近Googleでは検索結果ページだけではなく、個人のページにその内容と一致する内容の広告を自動的に出して、マージンをページ主と山分けするというビジネスモデルを考案したそうで、その紆余曲折が述べられています。
その後はYahooとマイクロソフトが検索エンジンに参入してきた経緯が述べられていています。しかしGoogleにとって思いがけないライバルとしてアマゾンが出現してきたことも興味深いです。検索エンジンのこれからの方向として、Web上での応用のみにとどまらず、デスクトップ上も戦場になっていくとの予測が立てられています。デスクトップ上のデータを履歴データとしてパーソナライズすればユーザにより多くの示唆ができるし、また、閲覧の場が広がればより多くの広告を出す余地が生まれて利益の拡大につながるからです。しかしこの方針は検索エンジンがアプリケーションの規格を無効化することにもつながり、マイクロソフトとの対立につながっていくだろうとしています。他の検索エンジンの方向として、商品検索が挙げられています。商品の検索についてもアドセンスなどの広告の機会の拡大につながるためであるが、そこではアマゾンが購買履歴からの本の示唆を利用したアルゴリズムを使って商品検索のポータルたらんとしてGoogleと対峙することになりそうです。次に検索エンジンの応用として、企業のナレッジマネジメントが挙げられていまう。もともとナレッジマネジメントは統一されていないフォーマットでの情報を検索する必要があったのだが、それに検索エンジンで培った技術が利用できないかというものです。これはすでに商用化されているようで今後の大きな成長の柱になるだろうとしています。
検索エンジンはさまざまな応用があることがわかって、この分野の研究を志す自分としてはとても勇気付けられる話がたくさんありました。この本で興味深かったのは、検索エンジンとして有意義であるためには、公平性がユーザに認識されることが大切であるということです。Googleはそうした意味で自らの利益を削ってでもこの公平性を維持しようと努力しているのがわかります。でも今後株式を公開してより利益を追求しなければならなくなったと時が正念場なのでしょう。また、公平性を維持したまま利益を挙げるためのシステムとして、キーワード広告が重要であることもわかります。そのため今の検索エンジンの流れはいかにこの広告の載せる余地を大きくすることが大きなイシューになっているのでしょう。もう一つの方向性として、ユーザが望む広告を出す制度の向上がありますが、これはユーザのデータを取り込むことが大切で、そのためにGmailやデスクトップ検索が大きなイシューになっていくでしょう。しかしそうした場合はユーザのプライバシーをいかに守るかが大切になってくるのでしょうが。
本書はそうした検索エンジンの流れを理解するのにわかりやすくてよい本だと思います。
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