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読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。
参謀本部と陸軍大学校
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また、本来戦争が政治の延長であるのに、権力争いの結果政治と戦争が離されてしまい、政治と戦争を統合して考えるための組織が作られなかったこともまた将来の欠点につながったとしていますが、これらの組織上の欠点を当時の日本を担っていた薩長閥によるの同質的なつながりと、政治、戦略、両方の能力に優れたリーダーが権力の中枢にいたことがカバーしてなんとか日清戦争や日露戦争に勝利しているとしています。しかし組織的に先述べたような欠点を含む日本はその後、政治的な配慮と戦略を考えることが出来ず、ソ連、中国、イギリス、アメリカ相手に多方面攻撃する羽目になることを細かに解説しています。
当時の日本陸軍は兵站とともに情報も甘く見るきらいがあり、それらの欠点が戦術的にも欠点を晒すこととなり、改革の必要性が叫ばれるものの組織の改革も権力争いによって有意な改革が潰されてしまう過程が描かれています。戦争後半では組織が統制を取りきることが難しいほど参謀本部は求心力を失い、本部の制止も聞かずに現地の判断で日中戦争に突入してしまったことも説明されています。 一方、実学重視の陸軍大学校は、優秀な作戦立案を担う低級参謀は輩出できるが、政治的側面もからめてより高次に局面を眺めて戦略を立てられる人材はついぞ育成することはできなかったと批判しています。
本書は日本敗北を組織的な欠点という観点から述べていますが、組織での権力争いなど、いつの時代も変わらぬ要因が破滅につながっていることを実感しました。またここでは政治と戦略を考えられる人材を育成することの重要性を説いていますが、具体的な育成方については述べられておらず、やはりこういう人材というのはいつの時代も得がたいものであるとも思いました。本書は戦争のカテゴリーに含まれますが、組織を考えるという点から、組織に関わるあらゆる人でも興味深いものだと思います。
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