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読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。
法人営業「力」を鍛える
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まず現在多くの法人営業マン達の売り込みには一貫性がなく、本来ならもっと収益チャンスがあるのに社としての統一された指針がないために逃しているという問題提起から始まっています。原因としてマーケット・ロジック(営業戦略)がないことと、戦略があったとしてそれを現場まで落としこめていないことの2つを挙げています。これらの原因として、
① 製品市場を固定観念で固めてしまって新たな需要が見えなくなること
② 経験や観にのみで動いてしまう
③ お客は神様であると考え、真に良好な関係が築けなくなる
④ 客とのしがらみで自由が利かなくなる
⑤ 営業は個人の才能によるという考えからのコントロールの放棄
などを挙げています。ここではとりあえず 統一性を図るべき要素として、「訪問回数」、「プライシング」、「販促費」の3つを挙げています。
市場を科学的に見るために
① 市場が魅力的か(規模、成長性)
② お客は誰か、その中で大切な客は誰か
③ そのお客をめぐる競争に自社は勝てるか
という観点から眺める必要があるといい、コンサルタントがよく使う手法として以下の4つの手法を紹介しています。
① チャンスマップ(商品×顧客の新旧軸による分類)
② 顧客セグメンテーション(客によって適切に扱いを変える)
③ 売り上げ方程式
(ターゲット人口×認知率×店頭接触率×購入率)
×(年間購入回数×1回当たりの購入点数×1点当たりの単価)
シェア = 商談カバー率×勝率
= 特約店カバー率×インストアシェア
= カバー率×認知率×トライアル率×リピート率
売り上げ = 訪問頻度×訪問認知×説明回数×説明のインパクト
④ 競合ベンチマーキング(コスト・ケイパビリティ)
次にこうした分析での要点として、とりあえず仮説を作ってそれからデータで検証することや、現場でのリアルな情報を入手すること、分散させずフォーカスすること、などを挙げています。
次に販売戦略としては規格を統一化して諸々のコストを下げる薄利多売型の「標準化戦略」と、数は出ないものの顧客の要望にキメ細かくこたえてその分の付加価値を回収する「カスタマイぜーション戦略」の2つに分類することができ、一般的にはこの両者は同じ戦術上では成り立ちえず、中途半端にならないよう意識する必要があると説いています。
次に顧客をグルーピングするために顧客を収益性などによって分けてそれぞれ別の対応(収入源、開発パートナー、深く付き合わない、など)を講じる「顧客ターゲッティング」や、 顧客を再発見する方法として「ディープカスタマーディスカバリー」という考えを紹介し、以下の個別の手法を紹介しています。
① 「ニーズ深堀マップ」 ~顧客の真のニーズを汲み取り、オプションを提案する
② 「顧客経済価値」 ~顧客にとってその提案が具体的にどれほどの利益を上げるか
③ 「意思決定主体」 ~顧客がどのような意思決定を経て購入に至るのかの分析
以上のような手法で顧客の定義が固まったら顧客との関係を再設計するために以下のような戦術を紹介しています。
① 顧客のセグメントにより異なった営業チームを編成する
② 営業の各プロセスのスペシャリストをプロジェクト単位で編成する
③ 各営業マンの生産性をベンチマーキングし、優秀なプロセスをチームで共有する
最後に、収益性を直接左右するプライシングについても様々な基準を紹介しており、各基準とも、値付けの際に、営業マン達が一貫した行動を取れるような合理的、客観的な指針になっている。またこれらの基準を徹底させるにあたりインセンティブなどの使い方を工夫することを勧めています。
営業戦略では、勝ちパターン(戦闘教義)を考案してそれにあわせたチームを編成するなど、戦争などで使われる戦術に類似した点も多いように思われ、以前読んだ戦争の本と絡めて考えると、とても興味深いものでした。本書では手法についてに紙面が多く割かれていましたが、コスト削減については具体的な指針が示されていたのに対して、競争相手が存在する個々の手法ではコスト削減ほど具体的な指針までは示すに至っていなかったように思います。これはやはり相手が存在する場面では決定的な戦略など存在し得ないということなのでしょう。
本書の要点として、優秀な営業マンの知識を共有化したり、統一したプライシング基準を構築したり、要はいかに統一した戦略をグループに徹底させて戦うかが重要であるということだと思います。
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