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Orfeon Blog

読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。

金融業の収益「力」を鍛える 

金融業の収益「力」を鍛える-BCG流 儲かる金融事業戦略を創る発想法金融業の収益「力」を鍛える-BCG流 儲かる金融事業戦略を創る発想法
本島 康史

東洋経済新報社 2005-09-23
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☆☆☆☆
昨今、盛んに地殻変動が喧伝される金融業において、いかにして収益を上げるかの戦略を立てるための考え方を示した本。

まず最初に、金融マンが抱く自らのイメージと顧客が持つ彼らへのイメージが食い違っていることを説明した後、これからの金融業での戦略立案に際して必要な思考法として、ロジカルシンキングなどがあることを説明しますが、こうした枠組みでゼロベースで考えるのは現実的でないため、それらの思考法はアイデア検証のチェックにとどめて、ある程度コンサルが現場で築いた使えるフレームワークを徹底的に身に付ける、「型」の学習を推奨しています。本書では9つの「型」が思考のフレームワークとして紹介されています。

 ① 「ホワイトスペース」
これはシリーズ最初の「戦略「脳」を鍛える」で紹介されたものと同じで、提供するサービスの用途をお客の立場から再認識して、あらたに市場を再定義してチャンスを広めるというものです。また逆になぜ自社のサービスが使われないのかも、重要な手掛かりになるとしています。

 ② 「因数分解」
市場や購入プロセスを、各要素ごとに分解して、独立した特徴量を抽出することによって、本質を洞察するための考え方です。例として、市場の動向を分解して伸びている要素に専念する事例や、営業プロセスを分解して改善点を見出すことを挙げています。

 ③ 「ロジック方程式」
前の②が既存の事象を分解するのに対して、こちらでは新たな市場などを推定するための仮説設定のための考え方として紹介されています。適当なロジックをつなぎ合わせていろいろな規模を推定します。ここではそのロジックを積み重ねる際に、適切(現実をよく反映した)な要素の分け方をすることが重要であるとしています。例として、マクロな市場推定を当てにして事業を拡大したが思ったほど伸びなかったのはそもそも自社のサービスがそのマクロで伸びる部分のどの部分に相当していたかを見誤った、という事例を紹介しています。

 ④ 「マトリックス」
顧客セグメンテーションを考え易くするために、ここではマトリクスで考えることの効用を説明しています。例として銀行では長年「預貯金残高」で顧客を定義していましたが、現在のような低金利時代では、またストック型喪モデルから、フロー型モデルへ移行しつつある現代では残高は収益の期待値をあらわす指標には不適切になりつつあり、ROAと残高を組み合わせたマトリクスで顧客を再定義する事例を紹介しています。

 ⑤ 「3C」
ホワイトスペースが顧客の視点で市場を広げてみるのに対して、3Cでは「顧客」、「競合」、「自社」の3つの視点に立ってそれぞれの思惑や戦略、弱み強みを総合的に見る考え方が示されています。例としてはカラオケで、自社の技術的優位を過信して、ユーザの歌いたい歌を素早く配信するというニーズに向けて画質等のクオリティを下げてもこのニーズに答えようとした競合の出現によって追い落とされてしまったパイオニアを取り上げています。

 ⑥ 「バリューチェーン」
提供するサービスの流れを分解して、それぞれの部分で自社は何処で強さを発揮できるのか、どこが利潤が大きいのか、を考えて資源を注力する目安にすることを紹介しています。また顧客の側からも、あるイベント(結婚、家の購入)に対してどのような必要が生じているかをプロセスに分解して自社にとって新たなチャンスはないか調べたり、またバリューチェーンを顧客の立場で組み替えたりすることを紹介しています。

 ⑦ 「経験曲線」
企業が強みを発揮できる理由として「経験の蓄積」が大きく影響することについて説明があります。コスト競争力やサービスの質は経験量と連動して向上していくものであるとしていて、これらを考えた投資や資源の投入が必要であることを説いています。例としてはCD-Rの市場での値段の急低下を見越しての撤退などを挙げています。

 ⑧ 「バリュープライシング」
値段をつける際には一般にコストに利潤を上乗せする「コストプライシング」と顧客に与える利益から値段を出す「バリュープライシング」とがあり、競争が激しくなった金融業界ではさっき紹介した経験曲線を活かして自社の強みを構築して高い付加価値を出しその資源をさらに投資して経験を得て…のスパイラルを作る必要性を説いています。

 ⑨ 「異同の視点」
これから業績を上げるための重要な要素として人事評価を挙げています。現在の銀行の人事評価では差がつきにくく、逆にモチベーションを下げる結果になっていることを指摘しています。また現行の評価システムでは目標と達成率で評価されるために、根気頑張りすぎると来期の目標が高くなってしまうため、適当に手を抜いてしまう問題点を指摘しています。また評価項目が多すぎることも個々の項目に注力できなくなる原因になるとしています。

最後にこれらの型の組み合わせ方について説明しています。戦略を考案するにあたって、各サービスが現在どのような成長段階にいるのかを掴んでおく必要性をPPMを用いながら説明しています。戦略立案の順に使われ所を並べると
 1. 市場分析 ①、②、③
 2. ニーズ分析 ④、⑤
 3. 価値設計 ⑥
 4. 経済性検証 ⑦、⑧
 5. 組織能力構築 ⑨(②)
のようになります。

本書で紹介された型は金融業に限らず、いろいろな業界で使うことの出来る汎用的な考え方であると思います。コンサルのケース対策のためにこういう考え方のパターンを数多く身に付けるにあたって、本書はとても有意義だと思います。

Posted on 2006/08/29 Tue. 21:34 [edit]

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