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世界文明における技術の千年史 

世界文明における技術の千年史―「生存の技術」との対話に向けて世界文明における技術の千年史―「生存の技術」との対話に向けて
アーノルド パーシー Arnold Pacey 林 武

新評論 2001-06
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☆☆☆☆
要約
先進国から発展途上国へ技術移転が行われる、という言葉がよく使われているが、著者は技術は完全にコピーとして移転されるものではなく、それぞれの地域の環境や文化様式によって適応化され、その場に適した技術としてブラッシュアップされていくものであり、技術はそうした地域間のやりとりを通じて発展するものであることを主張している。

まず、700年から1100まではアジア、中国で文明が発達していたとして取り上げていて、初期の文明においては人口の多さが食料などの必要性から技術が発達することを示唆しており、中国宋時代において遊牧民の侵入のために多くの人達が南に移住せざるをえなくなり、せまい地域において大勢の人を支えるための農作技術が発達した。また元に支配されると、納税や軍事移動の必要性から北部と南部をつなぐための大運河が建造され、水門式の運河がすでに開発されていたり水車が織物に利用されていたりと、大いに水力工学が発展していたことを説明している。水力工学については遅れていたと思われている中東においても、地下を通す水路が発達していたり、水車が使えないかわりに風車が発達していたりと、その地域に根付いた技術がそれぞれの地域でも発達していたことを述べている。 それぞれの地域における気候や文化の影響についても言及しており、中国北部では広い台地での小麦作が主流で大規模な灌漑技術が発展しやすい土壌があり、南部においては稲作が発達したが、これらは比較的狭い土地で行えるため、大規模な技術は発展しなかったものの、その環境に適応した技術は発達していたとしています。より南部の島々では自然の食料がたくさんあるため、こうした技術は発展しにくかったとしていて、畜産にいたっては食料に関する技術はほとんど発達しなかったものの、シンプルな軍事と強く結びついた生活スタイルは鞍や鐙を生み出し、脅威的な軍事力を作り出したとしている。また中国では官僚制が発達し文字を尊重する文化であったため、印刷技術が発達し文書で伝達が行われ、知識の伝達が促進される環境が整っていた。しかし中国は文学は尊ぶものの、技術に関する本は出回らなかったそうである。しかしアジアの技術発展は遊牧民の侵入によって物理的な破壊と侵略による被侵略者の保守化によって以後沈滞してしまう。

モンゴルによるアジア征服が行われたものの統治力はなく、そのため地元の民族の官士によって治めさせた。その際征服地間での技術者の移転が活発に行われ、中国からヨーロッパに技術移転が進み製紙技術や銃器が中国から移入された。この頃は印刷技術がヨーロッパにも広がったが、それ以上に重要だったのが航海と造船技術の発展であった。中国は優れた造船技術を持っていたにもかかわらず、保守的な政策から外洋探索を中止したため、その造船技術の活躍の場が失われてしまい、同時に海洋貿易による利益に気がついたヨーロッパはインドの優れた造船技術とお互い学びあって技術を確立し、アフリカを廻ってインドに進出したことでアジア貿易の足がかりを作った。造船の技術はヨーロッパだけで作られたのではなく、熱に強い仕組みなど地元での知識が必要とされており、また貿易でもヨーロッパの製品の質も良くなくてアジアで必要とされなかったため輸入超過により、アメリカやアフリカ大陸における金銀の鉱山経営にヨーロッパを向かわせることとなった。 一方ヨーロッパの造船に貢献したインドの造船技術はイギリスに好きなように使われただけで、イギリス国内で製造する技術が確立すると、捨てられてしまってその後は発展が滞った。

世界の軍事技術は火薬が利用されるようになってから大きく変わり、その先鞭をつけたのがトルコ帝国であった。伝統的に軍事力の大きな力であった騎兵時代において、いち早く銃器を利用することで一時的に圧倒的な軍事力を手に入れた。技術的には鋼鉄練成技術と頑丈な銃身、などの治金技術が貢献した。ここでもインドの治金技術が活かされていた。中国も火薬をいち早く見つけた国であったが、火器の利用は軍事機関との結びつきが強く、文治的な国風であったことが発展を遅らせたのではないかとされている。

以後ヨーロッパとそれ以外の国の技術力の格差は広がっていくのであるが、著者は技術に対する姿勢の違いの生み出す差として言及しており、現実主義的な中国などでは優れた技術はあっても、それらは各々の必要性にせまられて現実的に対処することによって生み出されていたのに対して、ヨーロッパでは各々の現象の背後に潜む法則性を抽出して利用することを試みようとし、同時に実験を計量的、計画的に行うことや製図を使った模型を作って分析を行うことが志向され、それが技術の高度化に伴う複雑さにうまく道しるべを与える結果となった。また技術的なものだけではなく、生産効率の向上などでは、各々の働き手の生産性を分析することで分業体制を生み出し、その効率性の分析改善志向は軍事での作戦行動の面でも活かされ、大きな力となったことを指摘している。

その時代の産業に発展を促した要素として、石炭が使われるようになり同時に蒸気機関が生まれたことが資源の大きな力となったことが挙げられていて、木材の不足を補うために石炭が利用され、それが技術革新によりコークスが生み出され燃料の効率が上がるとともに、ちょうど蒸気機関が生まれたことから、エネルギーを様々な用途の動力源に利用できることが産業の発展を促した。また先に述べたように実験計画法などによる科学の体系的知識の利用や分業など組織的な分析による効率化も産業革命を支ええる大きな要素であった。インドなどでは職人によって造船技術が優れていたが、賃金の安さから作業の機械化、効率化には動機付けが弱く発展しなかったため、その技術がイギリスの工場でも実現できるようになるにつれ、イギリスの自国産業優先の植民地経済政策もあって急速に衰える。またイギリスが鉱山、蒸気機関、化学などの技術が様々な産業で相互に影響を及ぼしあって発展したのに対して、インドではそうしたことは起こらなかったことが産業が発展しなかったことにつながったのではないかとしている。

その後は軍隊の移動や貿易の促進などの必要性から列強各国で鉄道がひかれることとなった。またこの頃は電信技術も発展し、物は鉄道で情報は電信で運ぶことが主流となった。この時期は日本が明治維新を迎えて近代化をはかったのであるが、諸外国から技術を導入する際、労働力は安く豊富にあるが資本が足りない状況であったため、今までの施設や技術を使いまわしで利用して安くあげることが主流であった。短期的にはメリットも大きかったが作業施設の集積化、大型化による規模の経済が進むことを阻害する要因にもなったのではないかとしている。中国でも列強との敗戦によって近代化が進められるが、技術だけ取り入れようとして、制度や組織の仕組みには手を入れなかったために上手くいかなかったことも述べられている。

最後では、アフリカなどでの発展途上国において、飢餓問題⇒農業生産高が上がらない、ことに対しても言及しており、農業生産性や衛生上の問題は環境に依存するため、単純に先進国から技術を移転すれば全て良くはなるわけではないとしており、 実際に先進国の単作物方式がアフリカの環境に合わずに生産性が落ちたり、 撥土板による鋤の導入が土地の侵食を促してしまった例などを挙げて、現地の昔からの技術との対話を通じて新しい知識が導入されるべきであるとしている。

感想
本書では著者の主張である対話を通じた技術発展や、技術が発展する上での文化的な環境による条件などについて触れられていて面白いです。 印象に残ったのは科学的な視点による欧米の技術力の発展についてで、ある技術を発見したから国力が強くなったのではなく、技術力を発展させるために必要な計量化や分析的な実験などのメタ的な技術を生むための素養が文化に根付いたからであるとしているのは大変面白かったです。あと、西洋の時計に対して見られた法則性への憧れについての話なども、中国の現実的な思考と比較して、西洋の基礎的研究での強さを説明しているところも興味深かったです。

後半では技術対話よりもそうした西洋の強さが強調されたものの、一方では一般的な科学的アプローチでは対処できない問題もあり、そうした問題では現実との対話を通じた知識が重要であり、その環境で培われてきた知識を蔑ろにするべきではないとの話は、技術に関わる者が現実への視点を広げる意味でも大切な示唆であると思いました。

Posted on 2006/11/15 Wed. 02:53 [edit]

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