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読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。

ものづくり道 

ものづくり道ものづくり道
西堀 栄三郎

ワック 2004-07
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☆☆☆☆
「動機」
最近国際的競争力が低下していると言われている日本でも、車や工作機械、精密機器など、もの作りに関る部門では依然強い競争力を維持している。こうした日本の強さについて興味を持って、 日本の品質管理の第一人者であり探検家としても知られる著者による技術論を読んでみました。

要約
本書では主に技術を生み出すための、創造性、チームワーク、現場からのアイデアの練り方、について、著者の技術観に絡めて言及しています。

創造性について、著者によると、日ごろ行っている仕事などで工夫してなにか新しい技術を生み出したくなるのは人が生まれつき持つ特性であり、創造性は人のいうことを聞いてしかたなく仕事をするのではなく自分から主体的に仕事に関ろうとする姿勢から生まれ、人に与えられる仕事はその人が行ったことが全体の中でどのような意義があるのかはっきりわかるようになっていて仕事に対してオーナーシップを持てるようになっている事が仕事に対する熱意を生むために必要であるとしています。 またそうした姿勢は自分が考えた工夫が実際に人に役立った時にフィードバックすることでより工夫するのが楽しくなるとしています。 こうしたことから、著者はアメリカから渡ってきた従業員を機械的に扱う品質管理の手法に対して懐疑的であり、現場で作業にあたる従業員にもっと仕事に対するオーナーシップを持たせることで、現場のなかから工夫を生み出すシステムを考案しました。

優れた仕事を行うためには他の人とのチームワークが大切で、登山家としての経験から、チームでの役割は人それぞれ異なるものの、皆が花形を目指すのではなく、一つの目的を成すためにはどの役割も同じで、各役割を大切にすることの大切さを説いています。一方、チームで新しいアイデアを出すには異なる意見を混ぜ合わせることが大切で、日本人は先の役割分担などでは上手くやるものの、異なる考えをチームで許容するのは苦手であるとしています。
またチームの活性化のためには"競走"が有効であることを説いています。競争は争ってどちらかを負かすためのものであるのに対し、競走はある共通の目的のために異なるアプローチで取り組み競うものであり、お互いのアプローチによる進捗を交換することでアイデアの切磋琢磨が促進されるとしています。

著者は自らの研究開発に対するアプローチとして、現場で気付いた異変などのきっかけから原因を突き止め研究の種を見つけ、それを元に新しい理論を作りその理論を元に現場での解決を図るという流れを説明しています。現場での異変から原因を求める際の統計的な考え方についても述べられているが、実際に工場などでは操業をとめるとコストがかかってしまうため、実験室的なアプローチは通用せず、観察することの大切さを説いています。また品質管理における統計的手法では、問題に対して手を打たないことによる損失よりも、過剰に無駄な対応することの方が損失が大きい場合が多く、過剰対応が厳しく諌められています。

感想
本書では、品質管理の簡単なアプローチや著者の研究に対する姿勢、技術者としての心構えなど、いろいろ述べられていて面白かった。特に理論を世の中に活かす為の"工夫"として技術を位置づけているのはありきたりかもしれないが、就職してからの職種と絡んでとても印象深かった。
品質の向上による産業の競争力には限界があるようにも思え、品質だけでなく利用者の用途にまで立ち入った工夫をすることが必要であると考えられる。 本書では従来の品質管理についてたくさん述べられていたものの、技術は、ものを作るためのものだけではなく人が便利に暮らすためのシステムそのものに対する工夫であるとする著者の態度は大変参考になる。

本書は主に考え方に関する著作であるため、本書で簡単に紹介されている統計的品質管理などの気付くための手法は詳しくは以前読んだ「意思決定のための分析の技術」などが参考になると思われる。チームの上手い運営方法などに関しても他にもっと詳しく載っている本があると思われるので追々読んでみたい。

Posted on 2006/10/31 Tue. 00:49 [edit]

category: 読んだ本

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