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読んだ本の要約、感想など。 他にも日々思ったことをつれづれと書き連ねます。
iPhone 衝撃のビジネスモデル
仕事の関係でケータイ関連についていろいろと興味を持って読んだ本の紹介を。
iPhone 衝撃のビジネスモデルiPhone 衝撃のビジネスモデル
岡嶋 裕史

光文社 2007-05-17
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☆☆☆★
本書は最近流行のiPhoneを題した本なのですが、既存の携帯電話に対するiPhoneの優位点だけではなく、PCを中心としたWeb2.0的なビジネスに対して携帯ビジネスが持つビジネスモデル上の優位点などが述べられている点が面白かったです。
内容的にはそれほどボリュームがあるわけでもなかったので評価は3.5としましたが、この本で述べられている点はとても明快で、携帯の持つ、ビジネスモデル上の優位点と、デバイスが持つインタフェースがこれから重要になる、ということに集約されます。
ビジネスモデル上の優位点としては、Webで支払いをするためにはクレジットカードの番号などを入力する必要があるのに対して、携帯で買い物をする場合、支払いを携帯代金に上乗せして済ませることができるため、手間やプライバシーなどを気にかけることなく気軽にできることを挙げています。 こうした気軽にできる支払いなどから、コンテンツの無料化が進むWebに対して、良いコンテンツに対してはお金を払ってもよいと考えるユーザが相対的に多く存在し、携帯Webでは今のところコンテンツ販売が成り立っており、それによるコンテンツ市場の拡大が更なる革新的なサービスを生む機会となるのではないかとしています。
韓国でオンラインゲームが発展した理由としては、若年者でもコンテンツ使用料を携帯電話の料金に上乗せでき、気軽に支払いができることから利用者の拡大につながったことが大きな理由として挙げられているのを読んだことがあるのですが、確かに気軽に支払いができるということはあなどれない大きな利点でしょう。
次に著者が強調しているのは、携帯が持ち運び可能でいつでも利用できることからユーザの利用機会がPCに比べて大きい点、そしてユビキタス社会の統合インタフェースになるのではないかとしている点です。これまでユーザは様々な電器機器が発売されるたびにその使い方を覚える必要に迫られ続けてきたのですが、これからくるとされるユビキタス社会では、現実世界のいたるところにアクセス可能な機器が存在するようになり、それぞれの操作法を覚えようとするとますます使いこなすための労力が増すと考えられます。そこで携帯がそれらすべての機器にアクセスする際の玄関となるインタフェースとなれば、携帯の利用機会は爆発的に増えるのではないだろうか、と著者は述べています。カメラやマイク、加速度センサなどの共通の規格のデバイスを組み合わせれば、様々な情報へ言語以外の問い合わせからアクセスすることができるようになり、そのためにインタフェースのデザインが携帯の使い勝手の決め手になるのではないかとしています。 そうした流れになれば、ユーザインタフェース分野では昔から強みを持つアップルが携帯電話業界で台頭する可能性も大きいのではと予測を立てています。
ここで述べられている、携帯がユビキタス時代の総合窓口になるという考えは、面白いもののそれが実現するにはまだだいぶ時間がかかりそうに思います。 それよりもこの本で印象に残ったのは、ユーザがコンテンツを作る際の金銭的なインセンティブが無ければ、Web2.0は大企業に富が集中する広告モデルに行き着き、ユーザの自発的なコンテンツ提供が減衰していくのではないか、と著者が投げかけた疑問でしょうか。著者は、コンテンツ課金が成り立っている携帯ビジネスで今後さらにユーザが作るコンテンツが発展していくのではないかとして結んでいますが、一般人が作ったコンテンツから利益を上げられるような時代が来るのかどうかは非常に興味深い命題だと思いました。
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  • ウィキノミクス
    ウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へウィキノミクス マスコラボレーションによる開発・生産の世紀へ
    ドン・タプスコット/アンソニー・D・ウィリアムズ 井口 耕二

    日経BP社 2007-06-07
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    ☆☆☆☆★
    読んだ本カテゴリですが、要約を書こうとすると、その手間から書くことに億劫になってしまって、いつまでたっても更新できないので、とりあえず本を読んだら感想だけでもどんどん書いていくようにしたいと思います。もし要約を期待されていた方がいられたらすみません。とりあえず満足度が五つ星の本くらいは今後も要約を書いていきたいと思います。

    感想
    Web2.0が社会に与える影響について述べた本です。ミクロな視点からは消費者としてのサービスの楽しみ方、個人の働き方や働く意識の変化などを、マクロには会社や組織という枠組みの変化から、それによって変わっていく経営戦略のあり方などが述べられていますが、基本的にはコラボレーションのあり方がどのように変わりつつあるのかについてを様々な例とともに解説された内容になっています。Web2.0的な考え方や潮流などをまとめて俯瞰するためにはとても良い本だと思います。

    自分にとって目新しかった点としては、所謂Web2.0的なコラボレーションの対象は、ネットで容易に流通可能で仕事の分割が比較的容易なソフトウェアなどの現実世界から受ける制約の少ないものに限定される思っていたのですが、本書ではサプライヤとの密なコラボレーションによってものすごい速さで発展したオートバイク企業やボーイングなどの例があり、このようなコラボレーションはウェブの持つ空間の制約を著しく軽減する特性だけから来るのではなく、仕事に参加する各プレイヤが自立的にそれぞれ得意な分野に向かって努力を出せるようなルールや価値観などを作り出すことが重要であることなどが挙げられます。

    個人の持つ創造性は他人や組織から決められた仕事をこなすところからよりも、自分の選んだ道や得意とする領域から生まれる場合が多いのではないでしょうか。ウェブなどのネットワークによって人がそれぞれ持つ能力と、それを必要とするタスク間のマッチングが成立しやすくなり、個人としては自分の持つ才能を活かす機会が大きくなるという、本書で今後やって来るであろうと描かれているような社会は、今よりも実力主義的で厳しい社会になるかもしれませんが、これまでだと開花しないまま終わったかもしれないような才能やアイデアを活かせる機会が増えたとも言え、何かのアイデアや、熱意を持って取り組める対象を持っていても、実際に人を探してチームを作っていくなどの、実現のプロセスにおける社会的なコストから及び腰になっていた人にとっては面白い世界になっていくように思います。

    また、最近は自作の小説、音楽、ゲームを作る人が多くなってきたように感じるのですが、やっぱり、自分の作った物を人から認めてもらえた時に得られる喜びは単にサービスを消費するよりも大きいもので、そうした自分の作ったものを公開することにコストがかからずに、公開したものに対するいろいろな人とのコミュニケーションが容易に取れる環境が整っていけば、人はサービスを消費することから、自らサービスを生み出していくことに、ますます楽しみの比重を移していくのかもしれません。そしてこうした個人が持つ、作り手に回りたいという欲求をうまく取り込んだ企業なり組織が、その分野でのプラットフォームを築いて発展していくのでしょう。

    テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

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  • 次世代ウェブ
    次世代ウェブ  グーグルの次のモデル次世代ウェブ グーグルの次のモデル
    佐々木 俊尚

    光文社 2007-01-17
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    ☆☆☆☆
    感想
    ちょっと前まで自分もWeb検索関連の研究を行っていたこともあって、Web関連でのビジネスやネットユーザの動向に興味を持って読んでみました。 検索支援の際に他のユーザの行動を利用したり、自分にあったコミュニティを見つけるための技術やそれが目標とするところについては知っている所が多かったので、評価は☆4つとしましたが、Webビジネスがどういう方向で発展しつつあるのかについてのバッググラウンドや示唆を得るためにはとても良い本ではないかと思います。
    一番印象に残ったのは、最後の方になりますが、仮想世界から現実世界にお客を誘導する音楽ビジネスの話でしょうか。何でもWeb上で済ませてしまえる便利さを売りにしたサービスが次々と出てくる昨今、それを撒き餌にしてしまって、あえて現実世界でのサービス提供に力を注ぐという発想は自分にとっては新鮮でした。もっとも収益システムなどもまだまだこれからなのでこれからどうなるのかはわかりませんが、もしそういう仕組みが働くようになると、たとえば音楽であれば、圧倒的に稼ぐようなミュージシャンは少なくなっても、今まで以上に音楽を人に聞いてもらえる機会がより多くのミュージシャンに与えられることになって、それによる質の変化についてはひとまず置いておくとしても、より多くの人が何かをクリエイトして発表すること自体が身近なエンターテイメントとなるような時代が来たら来たで面白いだろうな、などと思いました。

    要約
    近年、Web2.0などの言葉が喧伝されるようになり、日本でもネット系のベンチャーで成功する人もたくさん出てきているが、そうした日本におけるネットベンチャー成功者に共通する要素として、もちろん技術力も必要ではあるが、営業力が欠かせないことがわかる。今までの成功したネットベンチャーを振り返ってみると、初期はネット環境が一般消費者には広がっておらず、法人を相手にしたビジネスが中心となり、企業相手では営業力が大きくものをいう世界であったため、強い営業力を持った会社が力を伸ばし、上がった知名度を利用してさらに力を伸ばすという型がしばしば見られた。しかし通信インフラの整備や一般のネット人口の増加などの環境の変化が起こり、近年では技術力やビジネスモデルの秀逸なベンチャーが誕生している。新しいネットベンチャーは様々なビジネスモデルを展開しているが、それらの多くはWeb空間に存在する巨大なデータベースと、それを利用しようとする人たちを効果的に結びつけるための「UFOキャッチャー」としてのサービスの向上を志向している。今後より多くの企業が「UFOキャッチャー」としてのサービスの向上を目指し、そうしたサービスが社会を変えていくことになるだろう。

    まず法人向けのナレッジマネジメントで成功した事例を紹介する。もともと中古車販売店であったクインランドは、成績のよい営業マンの行動レベルまで落とし込んだスケジュール管理を他の営業マンに強制させることによって、効率的に営業での知識共有を目指したシステムを開発したところ非常に上手くいき、それを他企業に外販するビジネスモデルを展開して成功した。ここでは顧客に対してこちらのとるべき行動を示唆するために顧客の行動を数値化してデータベースに収めて利用している。次にクインランドは一般顧客向けに中古車販売のポータルサイトを製作した。このサイトの画期的なのは、現在Web2.0的であるといわれる、掲示板など顧客同士が情報を交換する場を作って顧客の訪問数を上げ、そこでの顧客の行動に応じたサービスを提供することで契約成受率を達成した点である。さらにクインランドは地元の神戸での商店などを巻き込んだ地域コミュニティのポータルサイトを作って成功させている。ネットによって零細企業もより多くの人に知ってもらう機会が増えたが、多くの零細企業はITに対してスキルを持たないため、こうしたポータルはありがたがられた。オーケーウェブなども一般人を対象としたちょっと知りたいことなどを掲示板で書き込んで質問すると知っている人がそれに答える、知識共有サービスを提供している。こうして蓄積されたQ&Aデータベースとシステムを外部の企業にアウトソースすることによって収益を上げるシステムを作り出した。近年ではユーザが自然に作り出したデータベースのインフラ化が進んでいる。こうしたインフラを利用して、圧倒的に裾野の広いWeb世界で中央集権的にサービス提供者と一般ユーザのマッチングを握ることで利益を上げるのがアマゾンやグーグルである。

    そうした中、ショッピングモールにおいて日本で成功している楽天はWeb2.0型企業とは言い難い。確かに消費者の感想や楽天ブログのアフィリエイトなどユーザの作り出すコンテンツは数多くあるが、楽天が成功した要素は、ポータルによる巨大集客力と、出展店舗にとって使いやすいECシステムが挙げられる。集客について、今後、ロングテール化などによって消費者がそれぞれの嗜好にあった様々な商品≒商店に興味を持ち出すようになると、一握りの有名サイトが集客力を持ち続けるYahoo!のような階層型ポータルサイトから、様々なサイトにチャンスが分散するGoogleのような検索システムに移行していくと考えられ、楽天のようなポータル型も相対的に魅力を失って中抜きにされるのではないかと考えられること、他のサイトがAPIサービスなどの提供によって、安価で簡単にECシステムを提供するようになると楽天の優位性が失われること、などの弱みが考えられる。さらに、楽天に参加する商店を比較する際、基本的には用意されている比較システムでは値段がメインに比較されるため、値下げ競争に陥りやすく、参加店舗の体力が消耗しやすい。また消費者側からも同じような品揃えの店舗ばかりで面白いくないとの意見も聞かれる。楽天はさらに多くの魅力的な店舗を増やすためには、それぞれの店の個性を伸ばすための提示方法を工夫するべきであろう。

    様々な概念を内包するWeb2.0においても、SNSやブログなどのコミュニティ関連の重要性は非常に大きい。それらがなぜ重要であるかというと、今まではWeb上でのマッチングを担ってきたYahoo!などのポータルサイトであるが、一般ユーザはSNSやブログなどの情報から自分の興味を刺激されて情報にアクセスする傾向が高まり、既存のポータルとしての価値が減少していくことが挙げられる。代表的なmixiは交換日記型のサービスを主導にして短期間で圧倒的なシェアを得た。これに対して、Yahoo!の井上社長は、今から交換日記のサービスによってmixiからシェアを奪うのは先行者が圧倒的に有利なので不可能であるが、SNSの本質は日記ではなく人間関係のダイアグラムにある、とし、Yahoo!がユーザに対して提供するサービスに付加する形で人間関係に関する情報を取り込む方法によって追い上げようとしている。そこで集めた人間関係に関する情報は、日記ではなくとも、サービスに対する行動情報やレビューなどを利用して、ユーザに対してより適切、効果的にサービスを提供することが可能となる、としている。こうしたコミュニティを重視する流れはオンラインゲームにも現れ始め、現実世界での人間関係を取り込んだゲームを製作することで、ゲーマだけではなく、一般のネットユーザをゲームに呼び込み、そこで現実世界の延長としても遊びを楽しみつつお金を落としてもらうためのサービスが考えられている。「セカンドライフ」などではネット上でのお金が現実のお金との兌換性を持つことから、それがもたらす影響については賛否両論あるが、これからは人間関係だけでなく様々なものが現実世界と仮想世界がシームレスにつながっていく方向に進んでいくのではないだろうか。

    人間関係のダイアグラムにはさらに大きな可能性があると考えられる。 検索エンジンでは世界トップシェアを持つGoogleは、Web上の巨大なデータベースからユーザにとって必要な情報を持ってくるためのアルゴリズムと、それをとても速く低コストで行うためのアーキテクチャーを開発することで今日の成功を手に入れたのだが、ユーザにとって必要な情報を持ってくるための精度をさらに上げるために過去のユーザの行動履歴を用いるなどの工夫が行われている。しかし過去のユーザの行動利用にも限界があり、ネット上の行動履歴ではそのユーザのその場の嗜好を掴むことは難しいであろう。そこで、ユーザが何かに興味を持つ際は周りの人間に影響されることが多く、ここでも人間関係を利用した支援が有効になると考えられる。しかし、そうしたソーシャル的な情報を用いて成功しているはてなブックマークは大きくなりすぎて、昔から利用していたユーザの中には、提示される情報の(その人の嗜好に沿った)質が落ちた、と考える人も出てきている。より多くの人が利用するようになれば、潜在的にたくさんの手がかりが得られるものの、それだけそこで提示される情報も平均化してしまう危険性も伴う。こうしたリスクに陥らないためには、情報をそれぞれの人に合わせた形で分類することが有効であるが、その際に有効となるのが、それぞれの人が現実に所属する様々なコミュニティに関する情報である。こうした情報をWeb上に取り込んだシステムはいまだ存在しないが、うまく取り込むことができればより強力な検索システムが出現するだろう。

    これからのWeb技術は、現実世界にある情報を仮想世界に取り込む、仮想世界にあるテキスト以外の情報もウェブページと同じシステムの上で利用できる、という方向で進んでいくのではないだろうか。現実世界に関する情報としては、個人の健康状態を取り込むことで健康管理をリアルタイムで管理したり、RFIDによって流通プロセスを管理してコストを少なくする、等、様々なアイデアがすでに実現されつつある。またテキスト以外の情報としては放送業界で利用されている膨大なコンテンツなどが考えられ、そこからユーザが欲しい情報を効率よく検索するために、画像や音声、動画の中身を解析するための技術が用いられている。またそのコンテンツを観た人にラベルを付けてもらうことで、テキストとしての情報として扱うことなども考えられている。こうしたシステムが実現してユーザが自由に自分にとって楽しい情報にアクセスすることができるようになれば既存の放送局の一方的に情報を流すモデルは陳腐化してしまうだろう。テキスト検索においては日本はアメリカに大きく出遅れてしまったが、今後より多くの利用が見込まれる映像、音声、動画に関する解析処理技術では日本は強みを持っており、まだまだこれから挽回の余地があるだろう。

    さて、Googleやアマゾンなどのプラットフォームシステムは、地主とも言える存在で、その上でビジネスを行う限り、おいしいところはその多くが持っていかれてしまう。そこでそうしたモデルから抜けるための示唆として、音楽配信サイト「mF247」を立ち上げた丸山氏について紹介する。丸山氏は、既存の音楽スタジオのシステムと正反対の、スタジオと契約するためにミュージシャンの方が審査料を払って登録した音楽を、ネットで無料で流す、という「mF247」というサイトを立ち上げた。 もちろんこれでは利益は出ないのであるが、丸山氏は、無料で流した音楽に感動した客にライブなどに来てもらって、そこでお金を落としてもらおう、という構想を持っている。最近の音楽視聴スタイルは、電車の中など何かのついでに聞くことが多くなっていて、音楽それ自体を全力で楽しむという傾向は弱まっているが、丸山氏は、全力で音楽を楽しむためにはライブに来るしかなくなるようになるのではないか、と考え、そうしたお客さんを集めることに、今までは収益の中心だった音楽配信を利用したのだろう。ネットにおけるプラットフォームから離れて独自の収益モデルを図るには、ネットの仮想世界から現実世界に、自らの土俵を作ってお客さんを誘導することが、一つの解になるのかもしれない。

    企業が宣伝を行う際のメディアとして、以前からブログが注目されている。しかし、ブログ広告の難しいところとしては、企業側がブロガーにお金を払って自社製品を持ち上げてもらおうとする、などコントロールしようとするとネットの人から逆に大きな非難を浴びることになる。そのためきちんと情報の可視性、ブロガーの独立性などを担保するための仕組みが必要となる。ブロガーの立場からすると、アフェリエイトによる収益よりも、読者から得られるリスペクト、自らが持つ影響力の実感、の方が重視されるようになり、Googleの検索ロジックの変更によってアフェリエイト的なブログの優先順位の抑制、中身に応じた優先付けなどもあって、いっそう中身を重視したコンテンツ作りが広がっていきつつある。したがってブログ広告を提供する企業も、ユーザに自社の製品について、どう書いてもらうかは全く干渉せず、まず書いてもらう機会を多く提供することから始めることが大切になるだろう。ブロガーの独立性の担保、ブロガーが相応のリスペクトを得られる仕組み、リスペクトを得られる人がそれに応じた収益を得られる仕組み、を作ることができれば、プラットフォームホルダーに支配されない新しいエコノミーモデルを提示することも可能であろう。

    テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

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  • 巨象も踊る
    巨象も踊る巨象も踊る
    ルイス・V・ガースナー 山岡 洋一 高遠 裕子

    日本経済新聞社 2002-12-02
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    ☆☆☆☆★
    感想
    IBMという巨大企業を立て直した経営者とはどのような人だったのだろうかと興味を持って読んでみたのですが、一番印象深かったのは彼が非常に競争精神旺盛な人物であることでしょうか。「我々が失った利益は全て競合が持っていってしまっている、それがいやなら彼らから奪うしかない」、といったような内容のメールを社員に流すエピソードもあったり、それが生半可なものではないことが伺えます。彼がIBMを立て直すために取った施策としては様々な戦略が挙げられますが、それを実行するための強力な意思が無ければ復活は為し得なかったと思います。競争精神でなくとも、常に徹底した実行の意思を持ち続けるための何かしらの気性を持つことは卓越した成果を挙げるための必要事項なのではないかと思います。
    また彼が当初はコンピュータ関連の知識を持っていなかったにも関らず多大な成果を挙げ、今後のIT業界の見通しなどでも深い洞察が示されていたのは、業績を上げるための知見は必ずしも深い技術の知識だけによるものではなく、顧客や競合など、幅広い知見から得られるものであることを示しているのではないかと思いました。

    要約
    まずIBMのCEOになったいきさつについて。 ビジネススクールを卒業した後、マッキンゼーに勤め、経験を積む内に実際に行動を起こす立場に立ちたいと考えるようになり、当時最大の顧客であったアメリカンエキスプレスに移り、その後ナビスコのCEOに就任。 ナビスコの業績は向上していったものの、投資銀行が見込んだほどの利益が得られないことから引き上げたがっていることがわかり、自らもナビスコの引き際を考えるようになっていたところに、当時メインフレームの地位低下によって業績が下降を続けていたIBMのCEOに要請を受ける。IBMの当時の状況は非常に危機的で、受ける気は全く無かったが、難しい問題にやりがいを感じた、IBMがアメリカにとって単なる大企業以上の存在であることなどを就任に強い熱意を持って頼まれたことなどから、CEO就任要請を受けることを決意した。

    当時のIBMの直接的な問題点としては、事業の中心であったメインフレームの価格が急落し資金繰りが苦しくなっていたことが挙げられる。そのため、メインフレームの値段を上げて絞れるだけ搾り取ろうとしていたが、それでは市場での信頼やプレゼンスを失ってしまうため、競合に合わせた値下げを指示した。幸運にも、IBMにいる技術の天才達がその当時取り組んでいたバイポーラ型からCMOS型へのアーキテクチャーの移行が成功し、競合とのコスト競争力が大幅に向上したことで値下げ戦略を順調に進めることができた。それでも資金繰りは苦しく、無駄だったり利益をあまり生まないような資産や事業は売却していった。また社内の硬直した官僚的な組織がコストを高くしていたこともあり、大規模なリストラに着手し、規則ではなく原則で行動すること、自分の所属する部署ではなく、常に全体の利益を考える社内文化に変えることを目指した。
    当時、IBMは解体してノンコア部分は売りさばくべきだという意見が社内外でも多かったが、顧客が求めているのは各々の技術ではなく一つのソリューションであり、それを実現するためには様々な技術を組み合わせることが必要であり、総合的なサービスを提供できるIBMにとっては総合的な強さは大きな強みになるのではないかと考えていた。そのため、戦略としてはIBMは一つに保持し、分割は行わないこと、事業を顧客の視点から見直し再構築することなどを挙げた。 こうしたことを実現するためには目新しいビジョンよりも断固とした実行と地道な行動が必要であったが、一部のマスコミはこの地味にも取れる判断に対して批判的であった。

    改革の重要要素として組織の改革が挙げられるが、まず経営幹部の人事について。IBMにような伝統ある大企業には内部で上手く使われていない有能な人材が数多くおり、外部から人材を引っ張ってくることは知識流失やモチベーション低下などマイナスになりかねない。そのため、自分は内部の人材を起用することを心がけた。反面、取締役は社内の決定に客観的で厳しいチェックをしてもらう必要があるため、役員数を18人から12人に減らして外部の人材を招いた。
    次に世界規模での組織の改変であるが、IBMはビジネスを全世界に展開しているが、それぞれの地域での組織が独立しており、それぞれ自らの利益を最優先にし、様々な地域にビジネスを展開している顧客に対して、グローバルなソリューションを提案することが難しかった。またIBMの特徴として強力な技術開発部の存在があるが、地域、技術に強みがあっても、顧客の立場に立って考える部署が無いことが問題であった。それを解決するために、強い抵抗を乗り越えて、地域別であった組織を産業別に再編した。各部署で統一的な行動をとれていないことは広告戦略にも当てはまり、それぞれの部署で別々の広告を打ち、重複による無駄が生じていた。しかしIBMのブランド力は依然協力であるため、広告戦略を全社で統一しすることでe-ビジネスという標語により、この分野でのIBMの地位を確固としたものにした。
    次に取り組んだのが給与体系であるが、IBMは終身雇用を前提とした家長父的な体系であり、業績に連動しておらず、人によって差がつかない仕組みになっており、これらの変革から手をつけた。 また、成果給としての有効策としてストックオプションであるが、IBMでは創業者の意向で用いられてこなかった。働く人達には長期的な株主のように考え行動してもらうこと、各部署の利益ではなく、全社の利益を基準とすることで一丸となって事業に取り組んでもらうこと、を考えてストックオプションを導入した。特に階層の上位にあたる役職には給与における株式の割合を多くし、全社における利益に対するコミットメントを高くすることを考えた。

    これまでは危機的な状況に陥ってしまったIBMを立て直すための応急処置についての記述であったが、次から述べるのは、新しいIBMのためのビジョンとなる話についてである。 まずこれまでのIBMの簡単な歴史について、これまで、同じ会社によるコンピュータ間でのソフトウェアの互換性がなかった時代に、IBMが機種間での互換性を保障し、規模の大小に合わせたラインナップを揃えたメインフレームであるシステム360によって市場を席巻し、会社のシステムも、半導体開発からソフトウェア開発、技術コンサルタント的スキルを持った営業など、 メインフレームのビジネスモデルを中心に組み立てられていた。当時のシステム360が圧倒的であったため、会社内では社外の競争相手を見る必要が薄まり、内向きな企業文化が形成されてしまったこと、独禁法による恐れから、徹底的に競争相手と戦う姿勢が失われてしまったこと、などの負の側面もあった。 こうした絶対的なメインフレーム時代を終わらせるきっかけとなったのが、Linuxなどのオープンなプラットフォームの出現である。それによって、ソリューションの一部に特化して戦える企業が現れるようになる。またそれに追い討ちをかけたのがパソコンの台頭であり、それを読めなかったことにより、OSやCPUの主導権を他社にみすみす渡してしまうことになる。力をつけたPC産業が次に狙いをつけたのが法人向けのサーバクライアントであり、一般向けのウィンテルモデルとの互換性を武器にIBMのメインフレームと真っ向からぶつかるものであった。
    しかし、各企業が自分の得意分野で専門化して、最終的にそれを組み立てる水平分業モデルは、顧客の側からするとどのサービスを選択すればよいか悩むことにもつながり、IBMの持つ広い分野の技術や知見は、そうした統合的なソリューションを提供する際の大きな優位性になると考えた。もう一つの希望として、これからは単一のPCからネットワークに主導権が移ることが挙げられる。ネットワークが普及すればPCは唯一の情報端末 ではなくなり、ネットワーク機器の需要と共に、それらを管理するためのインフラ製品の需要が高まる。またネットワーク化された情報管理者の権限は大きくなり、顧客としてIBMがこれまで慣れ親しんだ上位役職とのアクセスが重要になると考えられる。

    まず、IBMをサービス主導の組織に改変するために営業部門の下にサービス部門を設置、グローバルな体制を整えたところで独立した部門とした。サービス部門は顧客の要望によってはIBM以外のソフトやハードを薦める必要もあり、サービスを中心に据えた教育や考え方の浸透を図った。 ソフトウェアの強化にも力を入れた。今後、コンピュータ業界で大きな利益をもたらすのは、ネットワーク化したコンピュータを管理するためのミドルウェアであり、そこの注力しつつ、それらの技術を持つソフトウェア会社を次々と買収していった。
    次に科学的業績が非常に大きいIBMの研究開発部門であるが、それらの発見が業績に結びつかない理由として、製品部門がメインフレームと競合することからそれらの発見の製品化に及び腰であったことが挙げられる。こうした科学的発見を業績に結びつけるために特許のライセンス供与を始め、それらの技術を利用した部品の販売を行うことで大きく利益に貢献できるようになった。個別のサービスに適応するためのカスタマイズ半導体は高度な技術力が必要であり、ネットワーク機器などの需要によってその利益も大きく業績に貢献するようになった。
    次に焦点を絞ることについて。IBMは個別の顧客の要望に沿うアプリケーションを数多く開発していたが、それら全ての領域でトップクラスであり続けるのはもはや不可能になっていた。さらにそれらのアプリケーションを専門化して扱う会社を敵に回すことで、それらの会社がIBMと他のハードウェアを初めとする製品群を顧客に薦めることによる機会損失も大きいため、アプリケーション事業からは撤退し、それらを開発する会社と提携することでアプリケーション以外の部分でIBMの製品を薦めてもらえるようにした。同じようにネットワーク事業など、IBMの基幹とは成りえないと判断した事業からは撤退の道を選んだ。 インターネットの発展によるコンテンツの囲い込み争いやプロバイダ事業、ブラウザの開発にも加わらず、そうした企業と競合するつもりではなくそれを助けるソリューションの提供に徹することを示した。そしてこれまで非公開にすることで顧客を囲い込むことを狙ったIBM製品の仕様をオープンにすることで幅広いクライアントに使ってもらうための基盤作りを進めていった。

    IBMの経営やこれまでの経営で学んだことについて3つの基本的なテーマが挙げられる。1)事業を絞り込むこと、2)実行面で秀でていること、3)顔の見えるリーダーシップが行き届いていること、の3つである。
    事業を絞り込むことについて、企業が自分の得意でない分野に進出して成功する確率はかなり低い。本業が困難に見舞われたらあくまでその問題を解決することに力を注ぐ方が多角化に比べると実際にははるかに容易なのである。 しかし実際にはそうした多角化を進める経営者は多く、多角化の際に買収欲にはまってしまう場合が多いが、買収によって短期的に株価が上がるからと勧めてくる投資銀行には要注意である。実際に経営について深く分析をしていれば投資銀行が薦めてくるような買収案件で良いと思われるケースは稀である。実際これまで経営者として扱ってきた案件に投資銀行が薦めてきたものは一つもなかった。 事業を絞り込む際の難しさは現行の各事業から不利な情報が出てきにくいことがある。また選択の決定にあたって資源を振り分ける際も困難が伴い、今まで儲かっていた事業がより多くの予算を受け続けることになりがちで、新しい事業の芽は往々にしてつぶされてしまうことが多い。そのため、経営者がその芽を守ってやる必要がある。
    次に実行に関してであるが、自ら経営コンサルタントとして経営に関ってきた時からの経験であるが、戦略面で競合と大きな差をつけることは難しく、実際には戦略をいかに徹底して行うかの方がはるかに重要であるケースが多い。優れた戦略があっても業績が伴わないのは、実行に関する評価が行われていないからである場合が多い。卓越した実行を行うための要因として以下の3つを挙げられる。まず日々の業務での卓越した業務プロセスが存在すること、次に社員の全てが深く理解することのできる戦略の明確さ、最後に、卓越さが賞賛され競走意欲の高い、好業績をはぐくむ企業文化が挙げられる。
    最後の、顔のみえる指導者であるが、これが最も大切な要素である。顔が見える指導とは、組織の全員にとって顔が見えるものでなければならず。偉大な経営者は自ら問題に取り組み、他人の仕事を統括するだけの立場にはならない。また情報交換、対話を大切にする意思が在ることであり、戦略と業務のどちらも重視する姿勢でもある。だが一番大切なのは競争に勝とうとする情熱でありその熱意は組織に伝播し好業績を好む企業文化を創り出す。誠実さも重要である。経営者は多くの従業員を評価する立場でもあるが、それが一貫した規律にしたがっていないと士気が失われる。そのため経営者は常に公平さを心がけなければならない。

    (その他にも企業文化やIT業界の今後の動向についても述べていますが省略)

    テーマ:ブックレビュー - ジャンル:本・雑誌

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  • 技術の伝え方
    組織を強くする技術の伝え方組織を強くする技術の伝え方
    畑村 洋太郎

    講談社 2006-12-19
    売り上げランキング : 931

    Amazonで詳しく見る
    by G-Tools

    ☆☆☆★
    感想
    技術を伝えるための具体的なコツなどについて多く述べられているため、普段あまり意識しなかった知識の伝え方や説明のしかたなどをあらために意識する意味でもとても有意義な本だと思います。また人によく伝えることを考えることは、いかにしてひとが理解、上達するのか、ということを考えることにもつながり、伝える側から考えることで自分の技術や知識の研鑽するための補助にもなります。
    ただ、自分的には、具体的な示唆は多いものの、説明される示唆の順序が断片的であったり、ちょっとまとまりがなくて読みづらかったように思えたことと、述べられているアイデアは具体的ではあるものの目新しさという観点からは地味でもあるため、私的評価は☆は3個半としましたが、自分の行動を振り返るきっかけにもなり、伝えるための考え方を整理する意味でも面白かったと思います。

    要約
    団塊の世代の退職によって企業を支えてきた技術が産業界から失われてしまう2007年問題が騒がれているが、世代間に限らず、技術を人に伝えて再生産していくための方法は重要である。ここで本書で述べる技術の定義であるが、「知識やシステムを使い、他の人と関係しながら全体を作り上げていくやり方」とする。技術とは個人の中で完結する技能ではなく、人に伝えることも可能で、複数の人が持つ知識を組み合わせることでより規模の大きいものも作りあげることも可能となる。そのためにも他の人に知識を共有するための伝え方が重要になる。

    技術を伝える相手としては、世代的、場所的、時間的に離れた他人、あるいは未来への自分、などのケースがある。企業における競争環境の変化による配置転換など、人の移動が起こり、移動後でもその人の持っていた業務がスムーズに移行できるようにする必要性がある。定期的に伝達のために暗黙的な技術を明示化する必要に迫られて技術が残り易いというメリットがある反面、技術自体が失われるデメリットも考えられる。また企業間による技術移転では、人を介さない形で技術が伝えられると考えられがちであるが、実際には現場の気を含めた雰囲気も重要であるため、直接的な人による指導が欠かせない。技術を伝える必要性としては、技術を後の世代に伝えることで無駄な試行錯誤を避けることで効率的に発展を図ることができることとが挙げられる。もう一つで重要なのが、中途半端に技術が伝えられると、六本木の回転ドアにおけるドアの重さの重要性や、JCOの核燃料における形状管理など、暗黙的で重要な知識が正しく理解されていなかったために、大損害を起こすリスクがある。最近ではコンピュータによるシミュレーションによって開発コストを大幅に下げるシステムがあるが、その現実の裏にある暗黙的な知識を見逃す恐れがあることを念頭においておかなければならない。

    そのために企業などでも社内研修などで社内の技術を効率よく伝える試みが数多くなされているが、実際にはなかなかうまく機能していない。技術は本来伝えるものではなく、伝わるものであり、伝えられる側の立場で考えた「伝わる状態」をいかに作るか、に最も力を注ぐべくである。マニュアルなどは最初はシンプルであっても、環境の変化に応じて分量が増えてしまう宿命にあり、本質だけを抽出する作業が忘れられがちでもある。分量が増えると読むのも面倒になり、その結果、マニュアルの無視という最悪の結果に陥ることもある。伝えるための方策として、試験などを課すという強制的な手段もある。これはムチとして効果的でもあるが、やはり自発的な興味に及ぶものではない。人に知識が伝わる時というのは、相手の頭の中にある知識の構造が自分の持つ構造と(ほぼ)一致することでもある。もし説明を受ける側でそのような知識の構造を持っていなくても、経験豊富な人は似たような構造を当てはめることで理解を得ることができる。このようなことから説明する側は相手の持つ知識の構造に応じた説明をしなければならない。 失敗経験を集めたデータベースがあまり機能しない理由は、原因と結果だけしか載っておらず、原因によって、当事者がどのような行動を取ったかがわからないため、その知識を活かせないことが考えられる。伝えられる側が理解しやすい形でデータベースを作ることを考えることが重要である。

    次に伝える側に知識や技術を受け入れる素地を作るための方策であるが、 知識をうまく伝えることができるかどうかは、相手の知識を吸収しようとする意欲に大きく左右される。そのため、相手に自発的に知識を得たいと思うように仕向けることが大切である。以上のことを踏まえて、技術を伝えるために必要だと思われるポイントとしては以下の5つが挙げられる。
    1) まず体験させる
    2) はじめに全体を見せる
    3) やらせた結果を確認する
    4) 一度に全部伝えない
    5) 個はそれぞれ違うことを認める
    1.は実際にやってみることでもっと知りたいという具体的な欲求が出てくること、2.は全体を見せることで今自分がやっていることがどのような役割を果たしているかがわかる、3.は初めて経験する人は結果の良し悪しがわからないので評価基準として教えること、4.は知識は階層的な構造を持っており、それぞれの段階にあった教え方をするべきであること、5.は理解の方法は人によって違うので伝える側はそれに応じる工夫をすることを忘れないこと、となっている。 基本的に技術や知識は自分が欲しいと思ったところをむしり取るくらいの方が身に付くものであり、そうした場を持つことが大切である。

    伝えるものには、知、技、行動、の3つの種類がある。知は生産活動に必要な知識であり、技は様々な作業についてまわる技能的な行動や判断で、行動は技とも呼べない行動のことで安全などがこれに該当する。これに加えて特に意識しないで伝わるものとして、価値観や信頼感、責任感といった企業文化や気といったものも重要である。 また伝える知識にも階層性があるが、企業の階層性や技術の決まりごとなどにも階層性があり、これらは関連しあっていて、この関連性が理解できるようになると全体的な立場で考えることができ、伝えるべき知識を伝えなかったなどのミスが防ぐことができる。知識を伝える時は客観的になることが大事であると考えがちであるが、そうした観点からは暗黙的なことが忘れられて伝えられるものが無味乾燥なものになってしまうので、こうした知識の構造がわかっていれば主観的に伝えることも重要である。また暗黙的な知識は伝える際に忘れられがちであるため、そうした暗黙知を明示化することが大切になってくる。 人に伝えるためにまず大切なのが受け入れの素地を作ることであるが、これが上での1.2.に相当する。受け入れる素地ができあがった後の伝え方としては、3.の結果を確認させることが大切になるが、そのためには、伝えた相手にその内容をアウトプットさせて結果をフィードバックするのだが、アウトプットをさらに他の人に教えるという形式で行うことで、他人に伝えることを意識することで曖昧でない体系的な理解が得られるメリットがある。2.の全体を見せることも大切で、技術の思考展開図やスケルトン図などの体系的に得た知識を全体の中でマッピングすることなども効果的である。 また伝えたいことをうまく伝えるにはイメージを伝えることが効果的で、自分の体験の中で得たイメージを相手に伝えるのであるが、人のイメージの基となる体験は人それぞれなので、相手の持っているイメージに沿うように、伝える側は試行錯誤する必要がある。

    人に技術や知識を伝える際には、強くイメージ喚起を促す写真や画像を利用することが非常に効果的である。しかしそうした画像は情報が多すぎることが多く、要点を抽出して伝えるためにも言葉で補完するなどの工夫が大切になる。その際、伝える側としても伝える内容を図にするためには深い理解が必要となる。また伝える内容として、やるべきことだけを伝えると表層的な知識しか伝わらないこともあるが、何をしたら失敗するか、この技術が生まれる過程でどのような失敗があり試行錯誤があったのか、といった技術の生まれる過程や背景、文脈を多面的に伝えることができれば、伝わる知識もより深みのあるものになる。

    一人だけが技術を身につけても組織としては大きな成果は出すことはできず、さまざまな人が知識や技術を組み合わせることが重要となる。そのためには個人が責任を共有することが大切で、個人がそれぞれの考えを持つための独立性が担保されなければならない。そうした上でそうした個人知を共有するためには、互いが持っている個人知を表出する場を設けることが有効である。その際に各個人知がしっかりとしたものであるためにはその場に集う以前に各人がしっかり考える必要がある。各人がしっかり考えてきていれば、相手のアイデアもある程度考える経路がわかるためスムーズに知識を共有できる。そうした知識を共有するためには、普段からその人と接していると、その背後にある思想や価値観などがわかるため、さらにスムーズに相手の知識を理解することが可能となる。また、共有知だけが重要というわけではなく、各個人知の重複が少なければそれだけ知識の広がりが大きいわけで、共有するための伸びしろは大きいということになる。なのでさまざまなバックグラウンドを持つ人でチームを組めばそのプロジェクトは発想豊かなものになるだろう。

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